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紅茶好きの管理人が読んだ読書の記録のためのブログ。ネタバレありですのでご注意ください。
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マユリ
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Since2010.11.26
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読書と音楽とゲームとおいしいものと人形をこよなく愛する多趣味な人間です。
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オーリエラントの魔道師たち
オーリエラントの魔道師たち
  • 発売元: 東京創元社
  • 発売日: 2013/06/28


(2013年感想50冊目)



乾石智子 著  羽住都 表紙絵

おすすめ度★★★★☆(4・5くらい。乾石さんは短編も面白かった!


「人間の不幸せなところはね、本当に幸せなときにそれに気づかないって点じゃないかと、私は思うんだがね」(p240)


「夜の写本師」でファンタジー界に新たな風を吹き込んだ乾石智子さんの初の短編集。
「夜の写本師」を読んだ時から、もっとこの世界観で物語を読んでみたいと熱望した私ですが、今では「オーリエラントの魔導師」シリーズとして、堂々の展開をしています。嬉しい!
シリーズ名を冠したこの短編集には、様々な魔法を使う魔導師たちの物語が4篇収められています。

「紐結びの魔導師」は、ひねくれた青年エンスと、闊達な老人リコのところに、力比べに魔導師が訪れるところから騒動が始まります。
「闇を抱く」は悲惨な境遇にいる女たちが、その境遇を打開するために魔女となって暗躍する物語。
「黒蓮華」はミステリー風の復讐譚。
そうして「魔道写本師」は、「夜の写本師」の主人公カリュドゥの師匠、イスルイールの物語となっています。

どの短編も、風土や生活の中に息づく魔導師たちの様子が活き活きと描かれ、彼らの暮らすコンスル帝国の様子が目に見えるようです。
魔導師、それは人々の暗い欲望の澱をその身に受け入れ、暗い闇を抱える者たちの総称である。
人々のかわりとなって暗黒を背負う彼らだからこそ、日常の中に息づき、根付いているのかもしれませんね。

そんな暗い魔導師たちのお話ですが、物語自体は明るい結末を迎えるものばかりで、読んでいて気持ちがいいです。
私のお気に入りは「闇を抱く」と「魔道写本師」かな。
「夜の写本師」にちょい役で出てきたイスルイールが大好きだったので、彼が主役の短編とかすごく嬉しかったです。
個人的にはこの短編集を読んだら、「夜の写本師」が読みたくなること間違いなし!

しかし、乾石さんの作品に出てくる女の人は皆強いなあと思いました。
もともと文章のうまい作家さんでしたが、さらに文章がこなれてきて、読みやすくなっているように感じます。
この短編から、「オーリエラント」の物語世界の門を叩いてもいいかもしれませんね。
お気に入りの短編集です。

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ディアスと月の誓約
ディアスと月の誓約
  • 発売元: 早川書房
  • 発売日: 2013/04/24



(2013年感想44冊目)


乾石智子 著 吉田ヨシツギ 表紙絵

おすすめ度★★★★☆(静謐な美しさのある物語です)


イェイル、生きていく、ということは、ただ息をして暮らしていく、ということではないのだな、それだけでもすごく難しいのに、と心の中で叫ぶと、九歳の顔のままの乳兄弟は確かにそうだな、と苦しそうに顔を歪めた……。(p131)


乾石智子さんの書くファンタジーはやっぱりすごい、と読んでいていつも思う。今回は北の大地を舞台にした、冬と氷と、ファンズという獣たちに彩られた物語です。
静謐でありながら美しい文体、静かでありながらも熱い友情や信頼といった感情たち、骨太の世界観。乾石智子さんは間違いなく異世界を視ることが出来る作家さんだと思います。

家臣に育てられた王の息子、ディアスはのんびりと暮らしていた。しかしある日、彼を政敵とみなし恐れる兄、オブンの策略にかかり王から南の大地へと追放される。その頃、オブンの娘であり、ディアスの幼馴染でもあるアンローサも、危険にさらされ、北へと落ち延びるのだった……。

というようなお話かな。

乾石さんの作品はこれでもう何冊目になりますが、とにかく詩的で美しい文体、静かなようでいて熱い人間関係や感情の書き方が素敵です。今回のお話もそうで、少年少女たちの友情や信頼関係が、北の大地の寒さよりも熱かった!
乾石さんの文体は重厚だけれど、その中にくすっと笑えるようなユーモアや温かさがあるのが素敵です。
今回は少年と少女の成長の物語かな。王子様、お姫様として育ったディアスやアンローサが、落ち延びる先でそれぞれ様々な経験をして、ぐんぐんと成長していく様子が、感動的ですらあります。
特にアンローサと侍女ナナニの心の交流が素敵。
でも、わたしは9歳でなくなった主人公の乳兄弟、イェイルが好きです。亡くなったあともディアスを導きつづけ、最後にしたあの決断には、心を揺さぶられました。
本当、乾石さんは今の国内ファンタジー界において、素晴らしい作家さんのひとりです。執筆スピードも半端ではないので、本当すごいなあと思います。
乾石さんの作品を読んだことのない方には、ぜひ何か読んで欲しいなと思います。そうしてその素晴らしいストーリィテリングを体験して欲しいです。
この本も良かったです。もう、これからも絶対追いかけたい作家さんです。

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闇の虹水晶
闇の虹水晶
  • 発売元: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2012/12/07



(2013年感想27冊目)

乾石智子 著 今市子 表紙絵

おすすめ度★★★★☆(4・5くらい。もうひと押しくらい欲しいけど、乾石智子さんの作品はやっぱりいいです。)


その力、使えばおのれが滅び、使わねば国が滅びよう。
それが、創石師・ナイトゥルにかけられた呪いだった。(p3)



「夜の写本師」でファンタジー界を瞠目させた乾石智子さんの、第4作目にあたる長編です。
今回は出版社は創元ではなく、「写本師」の世界とは別の国を扱っていますが、そこが、この世界はほかの著作の世界と繋がっているのではないか、と思わせるところがあります。それだけでなんて素敵なんでしょう。

一族を皆殺しされた上に祖国を征服され、その征服後の国で飼い殺しにされている創石師(ナイア)、ナイトゥル。
彼は人の感情や病気などを視ることができ、それを石に変えることができますが、あるとき魔女に呪いをかけられます。
そんなナイトゥル、生きるも死ぬも投げやりだったのですが、国で戦乱の影が忍び寄り……。

といったあらすじかな。

やっぱり乾石さんはすごいなあ。好みはあるでしょうが、今まで読んだ本はハズレがありません。どれもびっくり、そうしてうっとりするほどの重厚感と闇や負の気配を感じます。
この「闇の虹水晶」は、出版社が違うからか、今までの作品と比べるとどことなくですが、読みやすくて爽やかというか、明るい気配を感じます。

何より、いつもと同じようなちょっとウジウジしている男主人公なのですが、彼を支えるヒロイン・ドリュティナオ(ドリュー)の存在が魅力的です。彼女の強さが、いつだって救いでした。
そうして今回は、少年たちの友情も光っていました。やっぱり暗い中にもさわやかなものがあって、読後感も良かったです。
私は「写本師」の世界観と闇の描き方が好きだけど、これはこれで十分すぎるほど楽しめます。こっちのほうが好きって人もいるかも。
文章はとても詩的で、含蓄に富んでいます。ああ、これこそがファンタジーだなと思わせてくれる作品を、いつだって乾石さんは書いてくれていて嬉しいです。

乾石さんはその重厚な世界観や筆致の割に刊行ペースが早いですが、クオリティがまったく衰えないのですごいです。
でも、もっともっとゆっくりでいいので、もっとすごいものを書いて欲しい。そう思わせてくれる作家さんであり、作品たちであります。
日本ファンタジー界で、今一番お勧めの作家さんのひとりです。


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デアラピス
デアラピス
  • 発売元: 東京創元社
  • 発売日: 2012/07/21



(2013年感想21冊目)


小瀬木麻美 著  友風子 表紙絵

おすすめ度★★★☆☆(3・5位。綺麗だけどいろいろ惜しい作品かなあ)


「私は、君が生まれる前から君をずっと待っていました。私は君を護り愛するためだけに今を生きています。(中略)でも、もし君がそんな私を受け入れてくれるなら、ずっと共に生きていきたいと思います」(p51)



小田桐静聴ルーム。美貌の兄と、「色」を見ることができるという能力を持った妹が運営するこの部屋は、ただ訪れた人の話を聞くだけ。なのに客足が絶えない。

このあらすじと題名に惹かれて、手にとった一冊です。
なんとも、ファンタジックで美しい物語でした。でも、いろいろ惜しいなあと思ってしまう作品でもあります。確かに素敵な話なのですが、あくまで雰囲気物にとどまってるという印象です。
でも、この雰囲気がとても透明な美しさをまとっていて、素敵なのですが。

なので、この本はあくまでこの形でいいのだと思います。いろいろ説明しすぎても、この本の持つ雰囲気が失われてしまうでしょうし、それは大変もったいないことだと思います。

譲と真梨亜の精神的な愛情には、何とも言えない感動すら覚えますしね。
本当に綺麗な雰囲気の物語でした。

登場人物も、なかなかに魅力的ですね。私はやっぱり譲がすきかなあ。譲と真梨亜の兄妹のやりとりは、お互いをすごく愛し合っているんだけど、あくまで兄妹、というところが、すごく絶妙な雰囲気で描かれていて、いいなって思いました。
伸司や祐巳と言った脇役も、本当宝石のように輝いていました。
だからこそか、最後の幕切れは悲しくて、ちょっと感動します。
「デアラピス」というのは、女神の石という意味らしいです。あるいは石の女神かもと作中で言及されていましたが……。
石と色彩と意志と想いの物語だと、この本を読んで痛切に感じました。
表紙の雰囲気が好きな方なら、読んでみてもいいのではないかと思います。

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魔道師の月
魔道師の月
  • 発売元: 東京創元社
  • 発売日: 2012/04/21



(2013年感想17冊目)


乾石智子 著  羽住都 表紙絵

おすすめ度★★★★★(面白かった! この世界観でまた読めることが嬉しい!)


「あれは闇、太古の闇、我らの血にさえまじっている、逃れられない運命の闇だ」(p147)


著者の作品、「夜の写本師」を読み終わったあとから、この世界観でもっと物語が読みたいと強く思った。その願いに、期待以上の形で答えてくれたのが、この本、「魔道師の月」であります。
続編というか、「夜の写本師」の約千年前の物語。
「夜の写本師」にも登場した、キアルスと、大地の魔術師レイサンダーの物語です。
この、兄弟のようによく似た外見をもつ二人の若き魔道士に400年前の出来事が絡み合い、ふたりは太古の闇、<暗樹>に立ち向かいます。

魔術と歌の壮大なる叙事詩といったところ。詩的で、濃厚で骨太です。
表紙は、主要人物だった3人の青年誰にでも取れるのがいいですね。私はキアルスが好きですが、竪琴持ってるから、ティルかな??
キアルスもレイサンダーも魔術師だからもっと堅物かと思ったら、意外と少年らしく気安かった。
そんな二人の魔道師の人生を垣間見れたことが素直に嬉しいのです。

この本は反則だ。読み終わったあと、しばらく、大作を読み終わった充足感でぼーっとしてしまう。感想が出てくるのにも時間がかかった。でも、しばらくするとこの世界観でさらに続きが読みたくなるし、こんな素敵なファンタジーがあるのだと、誰かに教えたくなってしまう本です。
このシリーズでさんざん言及されるように、魔道師とは闇を抱える職業であり、その闇はわれわれ人間の血潮にしっかりと流れている。逃れようはない、どす黒い感情となって。でもこの本は、そんな闇と向き合い、うまく付き合っていく方法を考えさせてくれるような気がします。このダークな世界観がたまらなく好きです。
濃厚な400ページでした。視点がいきなり変わってしまう唐突さはあるのですが、それも前作でなれたからか、気にならず読めました。
複数の時代の因果と運命が絡み合う物語。こんな上等なファンタジーはなかなかないと思います。
おすすめ。というか、これからの日本のファンタジーを語る上で必読といってもいいかもしれない一冊です。ぜひ、読んでみてください。

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