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紅茶好きの管理人が読んだ読書の記録のためのブログ。ネタバレありですのでご注意ください。
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黒い獣 (ハヤカワ文庫 FT―アイルの書 (75))
  • 発売元: 早川書房
  • 発売日: 1985/05

原題 The Black Beast
ナンシー・スプリンガー 著 井辻朱美訳 中山星香 表紙絵
お勧め度★★★★☆(私は大好きですが、賛否分かれる作品だと思うので、万人には勧めません)

アイルの書の4冊目。舞台は今までのアイルから<谷>へと移動します。
今までの三冊とはがらっと雰囲気の変わる話ですが、アイルの書のテーマというか、全体に流れる主旋律、エッセンスはのようなものは一番濃厚に感じられると思いました。

今回の主役はフレインかと思いましたがティレルですよね。血の繋がっていない兄弟ですが、血よりも濃い友情と愛情で結ばれているように感じました。狂気や盲目の中に覆われていますが、そこにあるのは紛れもなく優しい愛情だと思います。

凛とした美貌を持つ黒衣の狂気の王子ティレルと、それを一心に慕うフレイン。兄が愛する人にひどい仕打ちをしても、フレインは彼を許し一人旅に出ます。その最後は痛々しかったけれど、その行動の末に二人は改めて自分を自覚し、真の愛情を知ったのだと思います。

巻数を重ねるにつれて、女性の登場人物もとても魅力的です。

狂気の王子の復讐劇と書くと簡単そうに見えますが、描写がとてもリアルだと感じました。
ティレルの祖父が彼に言ったように、ティレルは間違いを犯したからこそ民に慕われるのだと思います。
狂気という暗闇の中に燦然と愛情が煌めく豪華な宝石箱のような話です。
アイルの書の中でも異彩を放ち、賛否分かれる今作ですが、私は大好き。

何かずっと長い事間違いを犯していたと自覚して、ふと許されたくなった時にお勧めの一冊です。

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フレイン ティレルの血のつながらない弟。ファブロン王の実子。女神シャマラに恋をする。
ティレル メリオールの王子。黒を纏う美貌の王子。父に復讐を誓う。
シャマラ 湖の女神。ティレルを愛するが踏みにじられる。
ミリッタ ティレルの恋人。ティレルの目の前でアバス王に殺される。

デイモン・ケイン ティレルの祖父。見者。
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