- 魔道師の月
- 発売元: 東京創元社
- 発売日: 2012/04/21
(2013年感想17冊目)
乾石智子 著 羽住都 表紙絵
おすすめ度★★★★★(面白かった! この世界観でまた読めることが嬉しい!)
「あれは闇、太古の闇、我らの血にさえまじっている、逃れられない運命の闇だ」(p147)著者の作品、「夜の写本師」を読み終わったあとから、この世界観でもっと物語が読みたいと強く思った。その願いに、期待以上の形で答えてくれたのが、この本、「魔道師の月」であります。
続編というか、「夜の写本師」の約千年前の物語。
「夜の写本師」にも登場した、キアルスと、大地の魔術師レイサンダーの物語です。
この、兄弟のようによく似た外見をもつ二人の若き魔道士に400年前の出来事が絡み合い、ふたりは太古の闇、<暗樹>に立ち向かいます。
魔術と歌の壮大なる叙事詩といったところ。詩的で、濃厚で骨太です。
表紙は、主要人物だった3人の青年誰にでも取れるのがいいですね。私はキアルスが好きですが、竪琴持ってるから、ティルかな??
キアルスもレイサンダーも魔術師だからもっと堅物かと思ったら、意外と少年らしく気安かった。
そんな二人の魔道師の人生を垣間見れたことが素直に嬉しいのです。
この本は反則だ。読み終わったあと、しばらく、大作を読み終わった充足感でぼーっとしてしまう。感想が出てくるのにも時間がかかった。でも、しばらくするとこの世界観でさらに続きが読みたくなるし、こんな素敵なファンタジーがあるのだと、誰かに教えたくなってしまう本です。
このシリーズでさんざん言及されるように、魔道師とは闇を抱える職業であり、その闇はわれわれ人間の血潮にしっかりと流れている。逃れようはない、どす黒い感情となって。でもこの本は、そんな闇と向き合い、うまく付き合っていく方法を考えさせてくれるような気がします。このダークな世界観がたまらなく好きです。
濃厚な400ページでした。視点がいきなり変わってしまう唐突さはあるのですが、それも前作でなれたからか、気にならず読めました。
複数の時代の因果と運命が絡み合う物語。こんな上等なファンタジーはなかなかないと思います。
おすすめ。というか、これからの日本のファンタジーを語る上で必読といってもいいかもしれない一冊です。ぜひ、読んでみてください。
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