- デアラピス
- 発売元: 東京創元社
- 発売日: 2012/07/21
(2013年感想21冊目)
小瀬木麻美 著 友風子 表紙絵
おすすめ度★★★☆☆(3・5位。綺麗だけどいろいろ惜しい作品かなあ)
「私は、君が生まれる前から君をずっと待っていました。私は君を護り愛するためだけに今を生きています。(中略)でも、もし君がそんな私を受け入れてくれるなら、ずっと共に生きていきたいと思います」(p51)小田桐静聴ルーム。美貌の兄と、「色」を見ることができるという能力を持った妹が運営するこの部屋は、ただ訪れた人の話を聞くだけ。なのに客足が絶えない。
このあらすじと題名に惹かれて、手にとった一冊です。
なんとも、ファンタジックで美しい物語でした。でも、いろいろ惜しいなあと思ってしまう作品でもあります。確かに素敵な話なのですが、あくまで雰囲気物にとどまってるという印象です。
でも、この雰囲気がとても透明な美しさをまとっていて、素敵なのですが。
なので、この本はあくまでこの形でいいのだと思います。いろいろ説明しすぎても、この本の持つ雰囲気が失われてしまうでしょうし、それは大変もったいないことだと思います。
譲と真梨亜の精神的な愛情には、何とも言えない感動すら覚えますしね。
本当に綺麗な雰囲気の物語でした。
登場人物も、なかなかに魅力的ですね。私はやっぱり譲がすきかなあ。譲と真梨亜の兄妹のやりとりは、お互いをすごく愛し合っているんだけど、あくまで兄妹、というところが、すごく絶妙な雰囲気で描かれていて、いいなって思いました。
伸司や祐巳と言った脇役も、本当宝石のように輝いていました。
だからこそか、最後の幕切れは悲しくて、ちょっと感動します。
「デアラピス」というのは、女神の石という意味らしいです。あるいは石の女神かもと作中で言及されていましたが……。
石と色彩と意志と想いの物語だと、この本を読んで痛切に感じました。
表紙の雰囲気が好きな方なら、読んでみてもいいのではないかと思います。
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