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紅茶好きの管理人が読んだ読書の記録のためのブログ。ネタバレありですのでご注意ください。
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Since2010.11.26
総読書感想数 430

読書と音楽とゲームとおいしいものと人形をこよなく愛する多趣味な人間です。
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車輪の下 (新潮文庫)
車輪の下 (新潮文庫)
  • 発売元: 新潮社
  • 発売日: 1951/11



(2012年感想114冊目)

原題 Unterm Rad
ヘルマン・ヘッセ 著 高橋健二 訳 
おすすめ度★★★★★(名作。特に学生さんには一度は読んで欲しい作品です。)


「そりゃ結構だ。だが、これだけはいっておくぜ。魂をそこなうよりは、肉体を十ぺん滅ぼすことだ。(後略)」(p66)


ヘルマン・ヘッセはかなり好きというか、思いれのある作家である。学生時代ひどい憂鬱に悩まされていたことがあったが、一冊の本を読んだことが、わたしの憂鬱を何か別のあたたかいものへと溶かしてくれたからです。それがヘッセの「デミアン」でした。
それ以来「デミアン」はわたしの人生の一冊とも言えるくらいの思い入れのある本になったが、「車輪の下」は今回が初読み。しかし今回縁があって「車輪の下」の読書会に参加することになったので、この度精読したしだいでした。

数日前まで、この話がハンス・ギーベンラートとヘルマン・ハイルナーという二人の少年に託されたヘッセの自伝的小説だということすら、浅学なわたしは知らなかった。しかしこの話を読んだら、きっと多くの人はヘッセという人物に対して深い興味を抱くようになると思う。
西洋と東洋の血を受け継ぎ、両者の思想を抱いた牧師の家庭に生を受けたヘッセ。その彼の幼年時代の苦しみや、自然と戯れ遊ぶ時の、また故郷を描写するときの瑞々しい美しさの中に、わたしたちは今も変わらぬヘッセの息遣いを感じることができるだろうと思います。

しかし、この本の魅力はなんといっても詩人であるヘッセの分身、ヘルマン・ハイルナーであると思います。ヘルマン・ヘッセと同じ「H・H」のイニシャルを持つ彼は、ヘッセの学生時代、あるいは詩人としての若々しい感性の純化した姿であると思います。主人公ハンスが車輪(社会)の下に押しつぶされた若者であるのならば、ハイルナーはその車輪から逃げ出した人物であると思います。ハンスには詩人になりたいという夢がなかったがハイルナーにはあった。その違いが、両者の違いなのだと思います。
つまりハイルナーは夢を持っていただけに社会をより広く、情熱的に(時にはその情熱は反抗心となったけれども)見ることができたのだと思います。その証拠に、社会に出て労働しだしたハンスには、もう持病の頭痛は起きていません。

ハンスはヘッセと違い、悲劇的な結末をたどってしまいましたが、ハンスの感じやすさ、繊細さ、そうして純粋な自然的な心というのは、愛すべき素養であるように思います。学生の人には、ヘッセの文章は身につまされるかもしれませんが、感じるものも人一倍だと思います。ぜひ、学生時代にヘッセを読んでみて欲しいと思いました。きっと、何かしら得るものがあると思います。

また、この悲劇的な本を愛すべき名作にしている一環に、神学校での少年たちの、生き生きとした生活の描写があることが挙げられると思います。それは例えるならば竹宮恵子の「風と木の歌」や萩尾望都の「トーマの心臓」のような、少女漫画のようなギムナジウム生活を思い起こさせ、そういったものが好きな方なら、ガラスのように硬質で、それでいて感じやすく瑞々しいヘッセの文章が、好きになるのではないかなあと思います。
ヘッセの作品は自己の内省の旅であり、読み終わったあとに、まるで一生涯の経験をしたかのような気分になります。だからこそ、わたしは、わたしたちはハンス・ギーベンラートを友のように感じ、愛しているのかもしれません。

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グスコーブドリの伝記 (宮沢賢治絵童話集)
グスコーブドリの伝記 (宮沢賢治絵童話集)
  • 発売元: くもん出版
  • 発売日: 1993/07



(2012年感想79冊目)

宮沢賢治 著  スズキコージ 棟方志功 絵
おすすめ度★★★☆☆(素晴らしい童話なのでしょうが、私にはイマイチでした。)


「私のようなものは、これから沢山できます。私よりもっともっと何でもできる人が、私よりもっと立派にもっと美しく、仕事をしたり笑ったりしていくのですから。」(p53)


先ごろ映画も公開された、宮沢賢治の最晩年の童話、「グスコーブドリの伝記」を友達からずっと前に借りていたので、これを機会に読みました。同時収録に短編、「オツベルと象」があります。

木こりの息子のグスコーブドリが、飢饉によって家族を失い、農業をし、勉学に励み、最後には火山観測所の人間となり、自己犠牲の精神から人々を、自分を苦しめた飢饉から再び救う……、というお話です。

この話は、雨ニモマケズに通じるものがあります。つまり、賢治の理想としていた人生の童話なのです。
無私となり、人々のことを考え、自分を犠牲にしていく。今の時代の人々が、ブドリのように生きれたらどんなにかいいでしょうか。そう思わされます。まあ、あくまでそれは一種の理想なのでしょうが……。
理想がなければ人々は生きていけない。だからこそ理想は尊いのだなあ、と思わされた一冊でした。
でもまあ、現代の人々にはちょっとブドリに共感するのは難しいかも、と思ってしまいました。斜に構えてしまうんですよね。かくゆう私も、一読目はこの童話の良さがわからなかったです。
あと、絵が独特かな。この独特な絵が、またいいのかもしれませんが。私の好みからするとちょっと外れているかなあというのが残念。
オツベルと象は、オツベルが可愛かったです。

このグスコーブドリの伝記という話は、賢治を知る上では欠かせない一篇。一読の価値はあると思います。

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メルヒェン (新潮文庫)
メルヒェン (新潮文庫)
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 380
  • 発売日: 1973/06

原題 Marchen
ヘルマン・ヘッセ 著 高橋健二 訳
お勧め度★★★★☆(ヘッセらしさの詰まった珠玉の短編集)

「ああ、わたしはおまえのために、わたしの知っている一ばんよいことをお願いしたんだけれど、ひょっとすると、ほんとうによいことじゃなかったかも知れないね。たとえみんなが、みんなの人がおまえを愛するとしたって、だれもおまえのおかあさんほどおまえを愛することはできないんだからね」

友人から借りたヘッセの短編集(ありがとう!)
ヘッセは大好きな作家の一人ですが、いままで読んだのはどれも長編だったので、短編というのはどうかなあと思い、なかなか手がつけられず……。

とはいえ読んでみて、短編集という形こそが、ヘッセの詩人らしさ、純粋な作家らしさを一番表しているように感じました。

この短編集には「アウグスツス」「詩人」「笛の夢」「別な星の奇妙なたより」「苦しい道」「夢から夢へ」「ファルドゥム」「アヤメ」「ピクトルの変身」の9篇を収録しています。

その中でも私のお気に入りはやっぱり「アウグスツス」天使が奏でるオルゴールのような音色の美しさと、人生の深さを考えさせられる名品ですね。あとは「笛の夢」「ファルドゥム」もお気に入り。「アヤメ」もいい。

この「メルヒェン」を読んで感じたのは、ヘッセの物語から考えるのは、生であり、愛であり、死であるということ。つまり人生であるということだと思います。ヘッセほど人生を深く考え、その憧れと苦しみを抱き、真の深みにまで到達した作家は少ないように思います。

本当に、大人向きの創作童話集と言った趣があります。

ヘッセの作品はヘッセの生きた時代、あるいはヘッセの精神をそのまま反映しているので、ヘッセという人を語る時にも欠かせない作品。
お値段もお手頃なのが嬉しい。

是非読んでみてほしい一冊です。

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走れメロス 太宰治 名作選 (角川つばさ文庫 F た 1-1)
走れメロス 太宰治 名作選 (角川つばさ文庫 F た 1-1)
  • 発売元: アスキー・メディアワークス
  • 価格: ¥ 588
  • 発売日: 2010/02/15

太宰治 作 藤田香 絵
お勧め度★★★★★(太宰を初めて読む人にお勧めの一冊)

私は、今宵、殺される。殺されるために走るのだ。身代わりの友を救うために走るのだ。

児童向けに挿絵をたくさんあしらった、太宰治の短編集。
「走れメロス」「畜犬談」「葉桜と魔笛」「黄金風景」「駆け込み訴え」「眉山」「燈籠」「善蔵を思う」「桜桃」「トカトントン」「心の王者」の11編を収録。

子供向けのレーベルから出た子供向けの本ですが、大人の方でも、太宰を初めて読む方には特にお勧めできる一冊です。私も太宰は初めて読みましたが、いままで抱いていた「暗い」とか「難解」というイメージはなく、「太宰ってこんなに面白いんだ! と新しい発見のできた一冊です。

この本に収録されている短編は、太宰らしい物の見方は随所にあるものの、とっても、人間のよい性といったものを改めて感じさせてくれる短編ばかりだと思います。
とくに「畜犬談」は純粋に面白いユーモアあふれる作品として読めます。これは本当に面白い。今でいうと男のツンデレという奴でしょうか。
それならば「駆け込み訴え」は男のヤンデレかー? などと思ったのですが、人間のさまざまな感情について描かれているので、この短編集を読むと、人の持つ複雑さ、奥深さがよくわかるようなのです。
「眉山」なんかはまさにそれで、本当に切なかった。

独特の文章と、語彙の多さも勉強になりますね。太宰は口頭で作品を書くことも多かったそうなので、日本語のテンポが流れるようで、気持ちいいです。

また、ふんだんに挿入されている挿絵もいいです。とくに畜犬談の挿絵可愛い。
この本を最初に読めば、太宰に好感をもつこと間違いなしの1冊だと思います。
興味のある方は是非読んでみてくださいね。

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ウンディーネ (新書館の海外名作絵本シリーズ)
  • 発売元: 新書館
  • 発売日: 1995/09


 原題 Undine
M・フーケー著 岸田理生訳 アーサー・ラッカム絵
お勧め度★★★★★(一人でも多くの方に読んでほしい作品です)

ドイツ・ロマン派後期の作家フーケーの代表作にアーサー・ラッカムが絵を入れたもの。
水のニンフェットであるウンディーネと、騎士フルトブラントの美しくも悲しい物語です。

高校生の頃初めて読んだ時から、私の最も好きな作品のひとつに数えられる作品です。
読んだ後にはいつも悲しくなり、でも心のどこかは澄み渡っていて、余韻に浸りたくなる作品です。

文章はちょっと固めですが、小学校三年生からと銘打ってあり、振り仮名がたくさん振ってあるので、幅広い世代で読むことの出来る本です。個人的には感受性豊かな学生時代や、大人になって愛情を知った時とかに読んでほしい一冊です。

ラッカムの挿絵はもちろん美しいです。12点。全てカラーです。
ラッカムの中性的でありながら美しい女性であるというような人物の欠き方は、この物語をさらに奥深く繊細に彩っていると思います。

一人でも多くの方に読んでいただきたい名作だと思います。

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