(2012年感想79冊目)
宮沢賢治 著 スズキコージ 棟方志功 絵
おすすめ度★★★☆☆(素晴らしい童話なのでしょうが、私にはイマイチでした。)
「私のようなものは、これから沢山できます。私よりもっともっと何でもできる人が、私よりもっと立派にもっと美しく、仕事をしたり笑ったりしていくのですから。」(p53)先ごろ映画も公開された、宮沢賢治の最晩年の童話、「グスコーブドリの伝記」を友達からずっと前に借りていたので、これを機会に読みました。同時収録に短編、「オツベルと象」があります。
木こりの息子のグスコーブドリが、飢饉によって家族を失い、農業をし、勉学に励み、最後には火山観測所の人間となり、自己犠牲の精神から人々を、自分を苦しめた飢饉から再び救う……、というお話です。
この話は、雨ニモマケズに通じるものがあります。つまり、賢治の理想としていた人生の童話なのです。
無私となり、人々のことを考え、自分を犠牲にしていく。今の時代の人々が、ブドリのように生きれたらどんなにかいいでしょうか。そう思わされます。まあ、あくまでそれは一種の理想なのでしょうが……。
理想がなければ人々は生きていけない。だからこそ理想は尊いのだなあ、と思わされた一冊でした。
でもまあ、現代の人々にはちょっとブドリに共感するのは難しいかも、と思ってしまいました。斜に構えてしまうんですよね。かくゆう私も、一読目はこの童話の良さがわからなかったです。
あと、絵が独特かな。この独特な絵が、またいいのかもしれませんが。私の好みからするとちょっと外れているかなあというのが残念。
オツベルと象は、オツベルが可愛かったです。
このグスコーブドリの伝記という話は、賢治を知る上では欠かせない一篇。一読の価値はあると思います。
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