(2014年読書感想1冊目)
乙一 著 toi8 イラスト
おすすめ度★★★☆☆ (3・5くらい。王道でありながら癖のあるファンタジー。)
「パパがそうのぞむのなら」
泣いている僕の後ろから声が聞こえてくる。
「ぼくは世界だってこわしてあげる」(p38)独特なミステリ小説を描いてきた乙一さんの、(多分)初のファンタジー小説。
学校でいじめられていたアールとグレイのアシュヴィ兄弟は、ある日父の遺品である絵本、アークノアを見つけてしまう。そうして、絵本の中の世界に流れ着いてしまった!
元の世界に帰るには、自らの破壊衝動が形となった、怪物を殺さなければいけなくて……。
というお話かな。
冒頭ははてしない物語をなんとなく思い起こさせたり、本の中の世界に流れ着いてしまったりと、お決まりの展開が続き、「違う、乙一さんはこんな普通のお話書かない!」と思っていたら、やっぱり普通とは違う物語でした。
アークノアの世界観が、緻密で、ちょっと恐ろしくて、素敵です。
特に住民たちが自らの創造主のことを意識し、その眼をいつも気にしているというのと、死んでも翌日には生き返る(死は通過点)という設定は、非常に乙一さんらしいひねり方をしているし、ちょっとダークな世界観は非常に好みでした。
途中中だるみしているなと思うところもあったけど、アールの造った怪物の正体がわかったあたりから、一気に読んでしまいました。
面白かったです。
しかし今回の最後でグレイは無事元の世界に戻れたけど、もう出てこないのかな? とか、新しく来た異邦人はどんな子なのか? とか、創造主はどんな人間なのか? とか、アールはもとの世界に戻れるのかな? とか、続きが気になる終わり方でした。
次巻は世界も広がりそうな要素が沢山ありますね。
また、登場人物の名前がほぼ全員紅茶にちなんだ名前というのも面白かったです。紅茶好きにはたまらなくて、元ネタを検索してみるのもいいかも、なんて思ってしまいました。
私はキャラクターで言うとルフナが好きです。ルフナもまた出てきてくれそうなので、続刊が楽しみ。toi8さんのイラストも素敵でした。
結構ページ数多いですが、読みだすと面白いと思います。
ファンタジー好きや乙一さん好きな方はぜひ。
続きも楽しみに待っていたいと思います。
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