(2013年読書感想80冊目)
原題
Dragon of the Lost Seaローレンス・イェップ 著 三辺律子 訳 増田幹生 挿絵
おすすめ度★★★☆☆ (3・5くらい。なかなか良質なファンタジーです。)
「でも、猛獣使いとたたかったときだって、塩におおわれた海底に落ちたときだって、勝ち目はあったかい?」ソーンは一歩もゆずらずに言った。「自分だけはかしこいと思ってるんなら、大まちがいだ」(p153)
中国系アメリカ人の作家、ローレンス・イェップの四部作、竜の王女シマ―の第一作目。
といっても日本では、このシリーズの刊行はこの1冊のみとなっていて、ちょっと残念です。なかなか良質なファンタジー小説なんだけどなあ。
ある日、宿屋の下働きの少年ソーンは、人間に身をやつしていた竜の王女シマ―を助けます。
シマ―は故郷の海を取り戻すため、魔女であるシベットを追っていたところ。
ソーンはシマ―に同行することを申し出ますが、二人は道中、喧嘩ばかりしていて……??
というようなお話かな。
面白かったです。短さの割に描写が丁寧で、読みごたえがありました。
また、シマ―の誇り高さと、ソーンの忠義っぷりがよかったです。
この二人が、喧嘩しながら徐々に友情を深めあっていく様が、ユーモアと感動を覚えることができ、とってもいいです。
振り仮名も多い新設設計なので、小学校中学年くらいから読めると思います。こういう本が、子供のファンタジー好きの萌芽になっていくといいなあと思える良書です。
だから本当に惜しいのは、続編の刊行が止まっていることですね。
ユニコーンに触れられたソーンの秘密、あるいは出生など、明かされていないことが多くてすごく気になってしまいます。
アメリカでは一応完結済みらしいですが、自分で原書買ってまで読みたいとは思えず……。いい本なんですけどね。
しかし、ハヤカワが児童向けのファンタジーを刊行していたとは知りませんでした。これから、ちょっと読んでみようかな?
ドラゴンのシマ―が誇り高くかわいいので、ドラゴン好きの方、東洋系ファンタジーが好きな方におすすめです。
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