(2013年読書感想79冊目)
多崎礼 著
おすすめ度★★★★★ (おもしろかった! 冬至の日に再読したいです。)
さあ、煌夜祭をはじめよう。(p290)良質なファンタジー小説を書かれると聞いた国内の作家さん、多崎礼さんのデビュー作の文庫版。
この文庫には書下ろし短編、「遍歴」が同時収録されています。
冬至の日に合わせて読もうと思ったら、それがかなわず、読み始めたのはクリスマスイブ。
でも、読み終わったらやっぱり冬至の日に読みたかったなあと思いました。
冬至の日に語り部が集まって互いの知っている話を語って聞かせる煌夜祭。
魔物を追い払うという伝承があるこの祭りはなぜ始まり、何の意味があるのか?
これは美しく、そして切ない魔物と語り部の物語です。
トーテンコフとナイティンゲイルという二人の語り部が、様々な魔物に関する物語を語るという構成で物語は進み、それぞれの話が一つにつながっていく様は圧巻でした。
アラビアン・ナイトみたいな話の構成と思ってもらえればいいのかな?
とにかく面白く、一気に読んでしまいました。美しく、切ない話。魔物という存在を、ここまでいとおしい目線で語った小説にはなかなかであったことはありませんでした。最後のほうでは思わず涙腺が緩んだりして……。
これから読む方は、短編も収録されている文庫版がおすすめ。切ないけれど温かい気持ちになれます。
複雑に絡み合った登場人物や物語は、ファンタジーを読み慣れていても理解するのに時間がかかりましたが、最後の感動は本当に素晴らしい。
章立ても短めなので、読みやすくすらすらと行けます。
何よりも本当に、暗い冬の夜に読みたい、情緒のあるお話です。
多崎さんはほかにも沢山の本を書いていますが、どれも評判がいいようなので、これからまた著者のほかの本も読んでみたいなと思いました。年末にこんな本に会えたことを感謝したい、とっても素敵な1冊でした。おすすめです。冬至の日にまた再読したいなって思っています。
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