(2013年読書感想77冊目)
ジャン=コーム・ノゲス 著 クリストス・デュリアル 絵 こまだしおり 訳
おすすめ度★★★★☆(大人のための絵本といった印象。)
ランスロットはその場を去ろうとしていた。心の中にあるこの美しく、力強い愛、そしておだやかになったこの愛のために、最後の日には神の許しを得られるかもしれないと思った。(p56)アーサー王伝説といえば、ファンタジー小説の基礎の一つと言われ、日本でも根強い人気のある伝説です。
かく言う私もアーサー王伝説に魅せられた一人で、特にランスロットには格別の思い入れがあります。
この小峰書房の絵本のシリーズは魅力的なラインナップが揃い、大好きなのですが、まさかランスロット単体で絵本を出してくれるとは思いませんでした。
絵本ですが、文字が多く内容もちょっと難しいので、中学生くらいから向きの、大人の絵本でしょう。
そうして、少なくともほかに一冊くらい、アーサー王伝説の本を読んでおくと楽しめると思いました。
湖の貴婦人ヴィヴィアンに育てられたランスロット。
その幼少期から、生涯の想い人である王妃グウィネヴィアとのエピソードなど、ランスロットにまつわる有名なエピソードをチョイスして収録しています。
名誉や愛など、絵本ですが王道な中世騎士物語を堪能できる一冊。
絵本の絵のほうも、どれもまるで中世のタペストリーを見ているようでした。
純粋に王妃を愛し、それがしかし不倫であるがために自分は純粋な騎士にはなれないと思い悩むランスロット。しかしその純粋な愛のために、最期の日には神の許しを得られるかもしれないと思うランスロット。
そんなランスロットの愛に対する葛藤が魅力的な一冊でした。
グウィネヴィアはランスロットにとってのファム・ファタールだったんだなあと思います。
ランスロットに愛されているがために傲慢になり彼を試すグウィネヴィア。このことからして、二人の愛情の先に破滅があることを予感させてくれます。
なにはともあれ、世界の名作や伝承を絵本で読めるこのシリーズは本当に素晴らしく、これからの展開が楽しみです。
大人のための絵本を探してる方にはおすすめの一冊です。
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