(2013年読書感想63冊目)
キャサリン・M・ヴァレンテ 著 井辻朱美 訳
おすすめ度★★★☆☆(3・5くらい。好きな人はもっとはまると思う。)
昔ひとりの女童がいて、その容貌は糸杉の木と水鳥の羽毛を照らす新月のようであった。(p4)
普段から割と強気な価格設定の東京創元社の本ですが、この本の価格はけた違いです。約520ページの本で1冊5500円。上下巻だから2冊買うと1万円くらいします。
そんな高い本だからといういささか俗っぽい理由で興味をひかれ、図書館で予約してみることに。
現物を見るまでは、きっとこんなに高いからフルカラーに違いないとか、すごい本に違いないかとか思っていたのですが、現物を見てちょっと拍子抜け。
フルカラーなわけでもなくて、挿絵があることにはあるけどそこまでふんだんというわけではない。
なぜこの本が5500円するの? と真剣に考えてしまいました。
お話としては現代のアラビアン・ナイト。物語の迷路に迷い込んだような、めくるめく入れ子構造の物語です。
草原の書と海の書という二部構成に分かれていて、夜の庭園で、一人の女童(めのわらわ)が、王子である童子に物語を語ります。
その物語は、王子と鵞鳥の物語、あるいは白い娘の話がメインになっています。
メモとかしながら読んでいくと楽しいんだろうなあと思いながら読んでました。
本当にすごい複雑な入れ子構造で、ところどころの発想も面白く、訳文も美しいです。
おもしろかったし、好きなのですが、なんだか今一歩っていう感じでした。
なんか、私がアラビアン・ナイトと聞いてイメージする艶っぽさみたいなのが、あまり感じられなかったからでしょうか。
ただ、女童と童子の会話や関係は愛らしく、ところどころときめきながら読んでいました。この女童がかわいいのですよ!
お話としては、第一部が男性性を語った王子の話で、第二部は女性性を語った聖女の話という印象。対になってる感じを受けました。
続編も読みたいですが、いつか読めたらいいなあという感じです。
すごく期待して読んだので、ちょっと肩すかしでしたが、ファンタジー小説としてはもちろん、幻想小説という趣のある一冊で、なかなか味わい深いです。
興味のある方は図書館で借りて読んでいることをお勧めしたい一冊です。
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