(2013年感想24冊目)
原題
Blood Red Roadモイラ・ヤング 著 三辺律子 訳
おすすめ度★★★★☆(なんか、内容は薄い感じなんですが、好きなお話です。)
トントンがシルバーレイクにやってきたときから、すべてが変わったわ。
もう一度、一からお互いのことを理解しなきゃならないのかもしれないな。
そうかもしれない、あたしは言う。(p260)イギリスでは人気を博し、リドリー・スコット監督が映画権を獲得している、ダスト・ランドシリ-ズの一作目、「ブラッドレッドロード」の翻訳の下巻です。
双子の兄、ルーを連れ去られた妹のサバ。夏至の日までにルーを助け出さなければ、ルーは生贄にされてしまう……。
といった内容かな。
表紙はルーですね。確かに格好いいです。あんまり出番無いですが……。
上巻の最後でルーをさらった元凶であるヴィガー王を倒したサバ。でも、ルーが危ない……、とまだまだルーを助ける旅を続けます。
悪の元締めが物語の半ばで死んで、これからどうなるんだろう? と思ったら、なかなか波乱万丈な旅路だった。
正直、お話としてはよくある話なのですが、それでも熱いものがあります。強くて(強すぎて?)タフでハードボイルドな主人公のサバ。旅を通して、恋に友情にと学んでいきます。
特にヒーローのジャックが格好よくて、脇役の個性も光る一冊でした。三部作が予定されていて、現在向こうでは二部作目まで出ているようですが、続編の翻訳をぜひ待ちたいです。
もう、本当にジャックが格好良くて……。こういう男子、好きだなあ。
お互いに激しく求め合いながらも、それ以上に大事なことのために、最後では離れ離れになるふたり。
ジャックの熱烈なアピールに対して、困惑しつつもつんつん跳ね返し、最後には素直になるサバの姿が良かったです。
続編では再会もあるようなので、今後の二人の関係に期待です。
あとは、せっかくのディストピア小説なのに、世界観の描写がかなり薄味なのがちょっともったいないかなあと思いました。でも、ちゃんとこれはSFだってわかるし、煩雑な世界説明がなかったぶん、物語には入り込めたので、これはこれでいいのかもしれないですが。
ただ、日本では売れそうにない小説かなあと思う。私は好きなんだけど、消費され尽くした感のある展開と物語って感じです。翻訳物は売れないと続きでないし、辛いですね。
ぜひ続編の刊行も望みます。
文体は独特ですが、慣れれば軽く読めて面白いので、何かそういう気分の時にお勧めの一冊かな。最初はちょっと殺伐としていますが、そこもまたディストピアらしいでしょうね。私は好きです。
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