(2013年感想13冊目)
藤木稟 著 THORES柴本 表紙絵
おすすめ度★★★★☆(この短編から入ってもとても面白かったです!)
「ロベルト神父、心配することは何一つ、この世に存在しない。すべては神の御手によって紡がれているのだから……。君には一言だけ言っておこう。『暗闇を知る者こそが、よりよく光を知るのだ』とね。君はそういう人間だ。」(p128)「バチカン奇跡調査官」シリーズの初の短編集。
ロベルトの過去とロベルトと平賀の出会いを描いた「陽だまりのある所」、平賀とローレンの出会いを描いた「天使と悪魔のゲーム」、サウロ司祭の過去を描いた「サウロ、闇を祓う手」、ジュリアの出生の秘密が明らかになる「ファンタンゴ」の短編4篇を収録しています。
実は私はこのシリーズ、興味はあったのですが、読むのはこれが初めてという不束者です……。長編は結構分厚いし、短編集だと入門編にはちょうどいいかな……、と思い入門書がわりに読みました。帯に、初心者歓迎とも書いてあるしね。
一抹の不安はあったのですが、この短編集から読んでも十分に面白かったです!面白くて読みやすいので、サクサク読めました。その結果一日で読破です。本当に面白かった。
「陽だまりのある所」はヨゼフ君(平賀ではない)とロベルトの友情が本当に素晴らしくて、最後の方ではうっかり涙ぐんでしまいました。こういう交流、本好きなら絶対憧れるだろうなあ……。
「天使と悪魔のゲーム」は、お話的には一番ホラーっぽかったかなあ? と思います。 でも、その分一番興味深く読んだかもしれません。
「サウロ、闇を祓う手」は、サウロ司祭の過去話。こういうおじいさんの若かりし時代のお話って、やっぱりしびれるものがありますよね。
「ファンタンゴ」はこの短編集の中で一番難解だったかな。ジュリアが6人いるってことでOKかな??
とにかく、予想外に面白く、また感激した一冊でありました。キリスト教の世界にも興味があるので、そこも楽しかった。お話としてはどれもなんてことのない、ありふれたお話かなあと思うのですが、この本を書ける藤木さんはすごいなあと思いました。
俄然、長編も読んでみたくなりました。しかしこの短編集のおかげで、先入観ではジュリアが好きだったのですが、なんとなくサウロ司祭が気になっています。また、長編を一通り読んだ頃に、読み返したいと思う1冊なのでした。面白かったです。この本からでも、ぜひ。
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