(2013年感想11冊目)
原題 The Case of the Velvet Claws
E・S・ガードナー 著 小西宏 訳
おすすめ度★★★★☆(派手さはないですが、冷静なメイスンが格好いいです。)
「いや、ぼく自身の義務だよ。ぼくはやとわれ剣士だ。依頼人のために戦うんだ。依頼人というものは、たいてい正直じゃない。だからこそ依頼にくるんだ。連中は事件にまきこまれている。それを助けるのがぼくの仕事だ。(後略)」(p25)知り合いのマイ・ベスト本だということで手にとってみた一冊です。
弁護士のペリィ・メイスンは、嘘ばかりつく依頼人に依頼を頼まれ、引き受けます。そうして、殺人事件に巻き込まれるのですが……。
本書は、多作な作家として知られたガードナーの、もっとも成功したシリーズ、ペリィ・メイスンシリーズの第一作目です。このあと何十冊も書き続けられていく作品の、記念すべき初のシリーズというだけで、感慨深いもものがありますね。
感想としては、面白かったです。派手さはないのですが、淡々とした筆致と冷静なメイスンが格好いいです。秘書のデラは可愛いし、このコンビ、好きになりそうな予感でいっぱいです。
簡素で平易な文章も、とっても癖がなくて読みやすいです。翻訳ものとしての読みやすさは、指折りではないでしょうか。
メイスンは、なんというか、色々な意味で若いのですが、そこがまた、格好いいですね。
古いミステリなので、今の時代では通用しない捜査や手法もありますが、これは良質なミステリだと思います。
作者のガードナー自身が弁護士で慣らしていた方なので、メイスンのポリシーが非常に格好よく、これはなんというか、このメイスンの魅力に引き込まれるシリーズなのだなあと感じました。
また、最後に次の依頼人が分かる仕組みなのもいいですね。次は、「すねた娘」です。
メイスンの冷静さ、若さが私はとにかくツボなのですが、淡々としすぎて性に合わない方もいるかもしれません。
でも、個人的には一度は読んでみてもいいシリーズなのではないかと思います。
おすすめ。ただ、早川版など色々な出版社から出てますが、個人的にはハヤカワで読みたかったなあと思います。いや、完全に好みの問題ではあるのですけどね。この創元版が悪いということはありません。
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