(2013年感想9冊目)
桑原水菜 著 トミイマサコ 表紙絵
おすすめ度★★★★☆(爽やかな時代小説です。)
単に年の頃が近く、背丈が近い、というだけの理由で、親方に組まされた。
が、とにかく気が合わない。
息も合わない。(p17)「炎の蜃気楼」シリーズで有名な桑原水菜さんの一般時代小説ものです。桑原さんといえば「炎の蜃気楼」の邂逅編で、やはり時代物を書いていますね。私はそちらは未読ですが、なるほど、書き慣れている感じがします。
しかも今回の舞台となる箱根は、桑原さん得意の地。筆が冴えています。
箱根の駕籠かきである漸吉と侘助は、相棒を組まされているが、とにかく気が合わないことで有名だった。速いは速いが、乗り心地は最悪。しかしそんな「ワビゼン」の二人が、色々なお客たちと出会い、成長していく物語です。
最初は喧嘩ばかりしている漸吉と侘助の二人に、ハラハラドキドキしてしまい、読む手が止まってしまいましたが、表題作の中頃から面白くなって来て一気に読めました。面白かったです。文章の癖など、気になるところもあるのですが(何かにつけておなごと多用したりとか)さすが桑原さん、色男を書かせたら一品だなあと思いました。ちなみに私は旋風次の兄貴が好きだなあ。
箱根といえば駅伝を思い浮かべる私ですが、あそこの急な坂道を、お客を担いで上がるのは、しんどそうだ……、と思いました。でも、そんな駕籠かきの様子が、活き活きと描かれていて、江戸当時の箱根の様子など、「そうなのか」と思わされることも多く、楽しく読めました。
ただ、とっても爽やかなので、いわゆる「桑原節」を期待している方には合わないかもしれません。
侘助の、ちょっと影があるように思われる過去に期待するところではありますが、果たして続編が出るかな……。
でも、続編が出るならぜひ読んでみたいと思わせるような一冊でした。
人情のある時代物で、読後も爽やかなので、そういうものが手軽に読みたい方には、おすすめの一冊です。
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