(2012年感想113冊目)
森絵都 著 伊勢英子 絵
おすすめ度★★★★☆(ほの甘くビターな短編集です。)
ぼくらの夏が今年で終わる。完全に終わる。
そしてもう二度と、はじまらない。(p56)久しぶりの森絵都さんの本です。「DIVE!」以来かなあ。表紙に惹かれて単行本版を読書です。
三つのピアノ曲にまつわる、三つの短編が収められています。
まさしく題名のように、チョコレートのようなビターさと甘さがあり、その中にアーモンド(芯)が入っている短編集だなあと思いました。
しかし森さんは、ティーンの心情を描くのがうまい! わたしがティーンだった頃なんてもう何年も前ですが、その頃のちょっとひねくれた、難しい年頃だった自分の青春が、ありありと思い出されます。この本はそんな10代の季節を過ぎていった、大人たちの短編集のように思いました。
中学生のそれぞれの学年のお話が収録されていますが、どのお話も秀逸。ほろ苦くも、優しく温かな気持ちになれます。
わたしが好きなのは、「彼女のアリア」と表題作かな。女の子が出てきたほうが、感情移入しやすく、物語も柔らかかったように思います。「子供は眠る」も良かったですけどね。表題作は、登場人物がとても魅力的でした。
それぞれのお話が、それぞれの登場人物のやり方で、輝くような時間を過ごしながらも、それを失い、少しずつ大人の階段を上っていく。そんな、三作共通のテーマのようなものも見えて、しかしどのお話も優しくてキラキラしていて、とても素敵でした。この年頃の子供たちは、子供達なりにいろいろなことを考え、悩み、生きているのですよね。そんな彼らは、傍から見るととても輝いています。
読みやすく一気に読めるのですが、ピアノ曲を聞きながら読むと、さらに良いのだろうなあと思いました。おすすめの一冊です。
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