(2012年感想112冊目)
原題 The Prince Caspian
C・S・ルイス 著 瀬田貞二 訳 ポーリン・ベインズ 絵
おすすめ度★★★★★(前の巻より、さらに面白いかも??)
「もし、いつか、わたしたちのあの世界でよ、人間の心のなかがすさんでいって、あのクマのようになっても、うわべが人間のままでいたら、そしたら、ほんとの人間か、けものの人間か、区別がつかないでしょ?」(p155)ナルニア国物語の第二巻目、「カスピアン王子のつのぶえ」の感想です。
一応再読。しかし、お話のすじをほとんど覚えていなかったので、新しい気持ちで読めました。
原題はそのものズバリのプリンスカスピアン、映画の印象もあり、カスピアン王子は美形でなかなか切れるやつなのかと思いましたが、原作は夢見がちでちょっとイマイチかな? という印象だったのが意外です。でも、アスランも言うとおり、そんなカスピアン王子だからこそ王になるのがふさわしいのかもしれません。
ピーター、スーザン、エドマンド、ルーシィの四人の兄妹は、今回そんなカスピアン王子を助けるために、ふたたびナルニアに戻ってくることになります。
しかし、そこは彼らの王位だった時代から、数百年もたった時代でした。
カスピアン王子も格好良かったけど、やっぱりこの物語は、4兄妹のお話なんだなあ、そうしてアスランや、ナルニアの住人、つまり正しく、ナルニア国の物語なんだなあと思いました。やっぱり、住民たちが生き生きとしていて、ナルニアという国はとても魅力的です。だからこそ、最後ピーターとスーザンに告げられた言葉には胸が痛みます。私たちは、いつでも本をめくればナルニアに行けることが、どんなにか素晴らしいことでしょうと思いました。
子供たちの中では、特にエドマンドの成長がなんと目覚しいことか! ピーターは頼りになるし、スーザンは厳しくも優しいし、ルーシィとアスランの関係は、胸が温かくなります。今回は子供たちも冒険慣れしていて、物語もよりファンタジーの様相を呈していて、そのあたりも楽しく読めました。しかしこの物語で一番のファンタジーは、ナルニアの美しい国そのものだと強く思います。そんなナルニアの国を想像しながら読むのが、何よりも贅沢な読み方だと思います。
次の物語はカスピアン王在位三年のころらしく、二年後のカスピアン王子に再び会えるのが楽しみです。
わたしも、年齢に関係なくいつまでもナルニア行けるような人間になりたいなあ……。
そんな、信じることの難しさを問いかけるような本でもありました。わたしは大好きな1冊です。
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