(2012年感想108冊目)
スーザン・クーパー 著 浅羽莢子 訳
おすすめ度★★★★☆(4・5くらい。キャラクターとウェールズの自然が魅力的)
「人間って複雑だね」と悲しげに言った。
「そうとも」(中略)「だがな、君らと君らの敵が戦いを終えたあと、ウィル・スタントン、最後に世界の運命を決めるのはまさにこういった人間なんだよ。」(p157)「闇の戦い」シリーズ三作目。
肝炎を患い、ウェールズの親戚のもとに療養にきたウィルに、闇の魔の手がのびようとしています。そうしてウィルはウェールズで、不思議な少年、ブラァンと出会い・・・。
といったようなお話です。
久しぶりに読んだけど、やっぱりこのシリーズは面白いです!
何気ない日常生活の中に忍び寄る「悪」の恐ろしさ、残酷さやそれに対する「光」の酷薄さが、なんとも良く描かれていますね。この、日常生活と溶け合ったファンタジィの描写に、心がとてもときめきます。
また、この巻から、今までその存在を匂わす程度だったアーサー王伝説の存在が、色濃く現れてきます。アーサー王伝説が好きなので、この展開は嬉しいです。
新しく登場した少年ブラァンも、なんと魅力的なことでしょうか。彼の正体(?)は割とすぐ想像がついてしまいますが、それでも胸震えるものがあります。
とにかくこのブラァンとウィルが魅力的で、あっという間に読み終えてしまいました。
しかしこのお話、あるいはシリーズ全体を覆う、えも言われぬ悲しみのようなものが、わたしはすごく心惹かれてしまいます。
カーヴァルを失ったブラァンの悲しみ、グウェンを失ったブラァンの父親の悲しみ・・・。様々な悲しみが本著には溢れています。そうして、そこがまたたまらなく良いのです。
またウェールズの風土や自然も魅力的な一冊となっています。いつか、ウィルたちの活躍したウェールズまで行ってみたいな、とそんなことを考えながら読書していました。
それにしても私にとってブラァンが魅力的すぎて、本当に愛おしいシリーズとなったのは間違いありません。次の最終巻では、ウィルやブラァンやドルー兄弟が加わって、またもや楽しめそうな一冊になりそう。読むのが楽しみです。
巻を追うごとに面白くなっていくシリーズだと思います。
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