(2012年感想104冊目)
紅玉いづき 著 sime 表紙絵
おすすめ度★★★☆☆(お話としては可もなく不可もなくといったところ。)
「本ってどうやったら、こんなにたくさん読めるんですか?」
岩波さんは丁寧に作業をしながら、顔をあげずに答える。
「好きになれば、読めるだろう」
「どうやって、好きになりますか?」
「そりゃあんた。面白ければ、好きになるだろう」(p36)紅玉いづきさんの「サエズリ図書館のワルツさん」一巻です。中身は連作短編集でしたが、1と銘打ってあるということは続編も考えられているのでしょうか。確かに続きそうな雰囲気ではありますね。
進んで読書するような本好きの人間にとって、本や本屋や図書館を舞台にした作品は、本当にずるい、と思います。しかも最近そういうのが流行ってるんだから、本当にずるい。
この本もそう言った本の一つで、大災害で紙の本がほとんど失われた後の日本の図書館が舞台となっています。
本はあるのですがほとんど電子書籍で、紙の本は贅沢品とされる世の中。未来にはそんな世の中来るのかなと本好きの誰もがきっと思いながら、この本では作者は、紙の本はなくならないと強く言っています。
ただ、作者様の紙の本への愛着が強いのはわかったのですが、お話としての面白みを考えるとうーん? と思ってしまう。お話としての中身があまりないというか……(特に最初の二篇)
そのあたりが残念でした。
でも、やっぱり読書や図書館が好きなら、ところどころ共感できる内容で、良かったと思います。
ただ、私はまだまだそこまでいかないので、書痴の人の本に対する執念といううかこだわりには、怖いなあと思います。
「上緒さん」「古藤さん」「森屋さん」「割津さん」と四編が収録されていますが、お気に入りは最後の二篇かな。上緒さんは最初はあまり好きになれなかったけど、いい子だと思います。
この本はSFだと思いますが、図書館を舞台にしたSFってちょっと珍しいかな? と思い、そのあたりは楽しめました。ただ、全体的に薄いかなあと思ってしまい、そこまでのめり込みませんでしたが…。
でも、続編出たら読むと思います。
好きな人は好きな題材の本だと思うので、興味がある人は、読んでみるといいのではないでしょうか。それこそ、図書館で借りるのが風情があるかも、なんて思ってしまう一冊です。
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