(2012年感想105冊目)
原題:The Lion, the Witch and the Wardrobe
C・S・ルイス 著 瀬田貞二 訳 ポーリン・ベインズ 挿絵
おすすめ度★★★★★(雪に閉ざされたナルニアがとにかく幻想的です。)
アダムの肉、アダムの骨が
ケア・パラベルの玉座について、
悪い治世が終わるもの。(p99)冬が近づくと、読み返したくなる本があります。
それがこのナルニア国物語です。
衣装ダンスの中をくぐり抜けたらそこは異世界だった。というのはあまりにも有名ですね。実際、次のシリーズ以降は衣装箪笥とは限らないのですが、とにかく、衣装箪笥というとナルニアへの夢とあこがれが広がる人も多いのではないでしょうか。原題も直訳すると、「ライオンと魔女と衣装箪笥」、ですしね。
ナルニアを初めて読んだのは確か大学生の時ですが、とにかくこの1巻の「ライオンと魔女」の雪に包まれた、静謐だけど鮮やかな世界にやられました。
そのナルニアにやってきた四人の兄妹、ピーター、スーザン、エドマンド、ルーシィは、ナルニアを不正に支配する白い魔女に、ライオンの王アスランとともに立ち向かいます。
やっぱり、何度読んでもナルニアはいいですね。何度も読み返したくなってしまいます。
改めて読み返すと、登場人物それぞれに個性があって、人物のかき分けが本当にうまいと感じました。そうして、永遠に続く善と悪との戦いという構図が、鮮やかに描き出されています。
兄妹のひとりのエドマンドが、最初は悪い魔女に味方するという構図も、単純な善と悪の対比ではなく描かれていて、最初は愚かなこのエドマンドこそ、この巻で最も愛すべき登場人物の一人と言えると思います。
兄妹の長男で、責任感が強くしっかりもののピーター、優しくて現実的な姉のスーザン、ちょっと意地悪だけど、本当は誰よりも思慮深いエドマンド、正直者で純粋なルーシィ。この兄妹それぞれの性格や行動が、読んでいて自分もナルニアに迷い込んでしまったかのように錯覚するほど活き活きしています。
そうしてまた、彼らを助ける異世界の、人間以外の住民も素晴らしく息づいています。フォーン、ビーバー、セントール、そうしてアスラン。ナルニア国物語の影の主役は、この人間以外の住民たちかもしれません。
今回はカラー版を読みました。この挿絵がまた素敵で、想像力をかきたててくれます。
それにしても食べ物の描写がなんだか多くて、それらを想像するのも楽しかったです。冬になると、紅茶を横に置きながら、のんびりと読み返したくなる、そんな大事な物語です。
再読にあたって、多少思い出が美化されているなあと思う部分もありましたが、ナルニアの素晴らしさは色あせないと思います。本当に素敵な物語世界です。個人的には、死ぬまでに一度は読みたい本です。
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