(2012年感想92冊目)
原題
The New Policemanケイト・トンプソン 著 渡辺庸子 訳
おすすめ度★★★★☆(4・5くらい。アイルランドの伝統音楽と一緒に読みたい。)
「本当に」JJはうなずいた。「時間って、どこに行けば買えるんでしょうね?」
アンが笑った。「それはこっちが知りたいわ。でも、みんなその表現をずいぶん簡単に使っていると思わない? 時間を買う。そんなこと、無理なのに」(p134)アイルランド音楽ファンタジー。
JJ・リディは伝統的な音楽一家に生まれたフィドル&フルート奏者の15歳の男の子。いつも時間に追われて生きているが、最近特に時間が足りない……。そんなJJが、母親の誕生日に時間をプレゼントすると約束したために、とんでもないことに足を踏み入れて……!?
というようなお話。
いやー、このお話は面白かったです。章末にアイリッシュのトラッド音楽の楽譜がついていて、わたしはYou tubeでそれぞれの楽曲を検索し、BGMにしながら読んでいました。そうすると、雰囲気もおもしろさも倍増するように思います。そういう読み方はでも時間がかかるので無理という方は、アルタンとか聞きながら読むといいかなあと思います(わたしは後半はそうやって読みました。)
現代社会では、多くの人が時間が足りないという悩みにおかされています。そういう私も、24時間じゃたりない、とつくづく思いながら生きています。でも、本当に時間が足りなくなっていたら、忙しすぎてそのことにも気づかないんだろうなあと思います。そうして、大事なもの(想像力とか)が失われていくんだろうなあ。
アイルランドの音楽の歴史に触れられたのも良かったです。
それにしても、ティル・ナ・ノーグの書き方が、本当にのんびりしていて素敵です。現代社会の時間が、そちらに「漏れ」ているなんていう発想も素敵。
話の本筋に入るまでがいささか長いのですが、後半はちょっと話に進展があるので、このまま下巻に期待したいと思います。
しかし、音楽を聞きながら読書するのは、ある意味とっても贅沢な至福の時間でした。そんな満足感を与えてくれた1冊です。
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