(2012年感想84冊目)
原題 Das Gauklermärchen
ミヒャエル・エンデ 著 矢川澄子 訳 司修 絵
おすすめ度★★★★★(いろいろ考えさせられる、とっても素敵な一冊でした。)
きたるべき世界は幻想からしか生まれない
みずからつくりだすもののなかでこそ、ぼくらは自由なのだ。(p192)ミヒャエル・エンデの戯曲。
「サーカス物語」という題名ですが、そのサーカス団はいままさに廃業を余儀なくされているところ。スカウトしてくれるという会社が出した条件は、団員の知恵遅れの少女エリを手放せというもの。
悩む団員たちに、エリはお話をせがみ、そして……、というお話です。
いやー、面白かった!
学生の時一度読んだ記憶があるのですが、その時はいまいちおもしろさがわからなかったのですが、今読むと本当に面白いです! 大人向きの戯曲だなあと思いました。
劇中劇があって、その劇中劇と劇がつながって最後の展開になるのですが、この劇の登場人物が、みんなどこか妖しくて、それでいて繊細なのが素敵です。
このお話は、明日国という国名に象徴されるように、痛々しいほどの希望と愛情、そして夢を見、想像することのすばらしさを訴えた作品になっています。とても素晴らしい。本当に素敵な一冊です。
最後、最初はエリを手放すことが彼女の幸せになると考えていた団員たちが、エリを手放さず、時代遅れで嘲笑の的になろうとも、サーカス団を続けていこうとしたところが良かったです。
現代社会にたいする様々な批判のようなものも読めて、非常にエンデらしい作品となっているように思います。
また、本の装丁も本当に素晴らしく、図書館で借りたのですが、思わず手元に置いておきたくなります。
読みやすいし、本当におすすめの一冊です。
ぜひ読んでみてください。面白かった。
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