(2012年感想78冊目)
原題 The Unicorn Sonata
ピーター・S・ビーグル- 著 井辻朱美 訳
おすすめ度★★★★☆(シェイラの様子が、美しく幻想的です)
「(前略)シェイラを出入りするのに必要なことは、それだけだ――つまり心からの願いと、音楽、それに月光が少々」(p65)「最後のユニコーン」で有名なピーター・S・ピーグルの別作品。
最後のユニコーンは未読ですが、このユニコーン・ソナタは単品で楽しめる作品となっています。
面白かった! 一気に読んでしまいました。
主人公の女の子、ジョゼフィン・アンジェリーナ・リヴェラ(ジョーイ)が、現代社会と隣接する別世界、シェイラと現代社会を行き来するのですが、このシェイラという場所がまさしく妖精郷。ジョーイの言葉を借りればとっても美しいかとっても不気味かのどちらかのものしかなくて、とても幻想的です。このシェイラの描写だけでも、ファンタジィ・ファンなら読んで感銘を受けるはず。素晴らしかったです。
また、ジョーイのアブエリータ(おばあちゃんの意)もよかった。
でも何より印象に残るのは、ユニコーン(大老)でありながら人間の世界に焦がれ続けるインディゴの存在でした。我々が時に妖精郷にこがれるように、妖精たち幻想世界の住民も、人間の世界に焦がれ、その双方の思いがこういった<境>を生むのなら、こんなに素晴らしいことはありません。想像力の無限の可能性を垣間見た気持ちです。
ユニコーンの角が奏でる音楽、私も聞いてみたいです。
とにかく、読んだあとになんとも言えない不思議な気分になります。ジョーイとともに少しだけ成長するような。
読みやすいですし、長さもお手頃なちょっと長い中編といったところ。ファンタジーを愛する全ての人におすすめの一冊です。
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