(2012年感想67冊目)
原題 Kushiel’s Dart
ジャクリーン・ケアリー 著 和爾桃子 訳 Chiyoko 表紙絵
おすすめ度★★★★☆(4・5くらい。官能的なファンタジー。面白いです!)
行儀よく目を上げてメリザンド・シャーリゼの青い目とまともに合わせると、彼女の視線が槍のように身を貫き、膝の力が抜けて水のようになった。そこで、彼女こそクシエルの末裔だとわかった。
(中略)
こうして、私はメリザンド・シャーリゼに引き合わされた。デローネイに匹敵するほど緻密な頭脳と、はるかに冷たい心の持ち主に。(p101)
ジャクリーン・ケアリーの処女作、クシエルの矢の一巻。原本を三分割したものの1冊目に当たります。
この本はおもしろかったです! いや、なんだかはまってしまいそうな、癖になってしまう面白さがあります。正直最初のほうは主人公フェードルの成長の様子を描いているだけで、ちょっとつまらないのですが、あるあたりを過ぎたころからとても面白くなっていきます。
しかしこの小説、読まれるにはちょっとご注意を……。まず。主人公のフェードルが、いわゆる神聖娼婦みたいな存在という立ち位置です。しかもフェードル、懲罰の天使クシエルの矢をその身に受けて生まれたアンクィセットという存在で、そのために超が付くほどのマゾヒストであります。しかも主人公のライバルであるメリザンド・シャーリゼ嬢は、天使クシエルのお血筋で、生粋のサディストです。そんな二人の、反発しあい、惹かれあいの関係にも期待です。(メリザンド、もっと出てきてくれないかしら)
しかもこの世界は愛の営みは神にささげられるもので、一通りの組み合わせならなんでもOKという世界です。この、キリスト教とは一線を画するおおらかな性に対する見解を可能とした世界観が、とても魅力的です。
フェードル、そんなこと言いつつ、基本的にはすごくいい子です。
育ての親のデローネイや、一緒に育つことになる美貌の少年アルクィンもとてもいい人で、陰鬱な宮廷陰謀劇の救いとなっています。
でも、私が好きなキャラクターは終盤にちょっと出てきた、フェードルの護衛を務めるジョスランですね。お堅い修道騎士が、娼婦の護衛をするなんて、うまいなあ、と思ってしまいました。
出てくる登場人物も9割は美形なので、そういうのがお好きな、少女マンガを読んで育ったような、女性の方にお勧めのシリーズかもしれません。それにしても続きが気になります。2巻はさらに怒涛の展開だそうで、本当に楽しみです!おすすめ!
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