(2012年感想60冊目。)
原題
A Rare Benedictine
エリス・ピーターズ 著 岡本浜江 岡達子 大出健 訳
おすすめ度★★★★★(カドフェルは初めて読みましたが、すっかり虜です)
いや、どの道を通ろうと、行く手に目印の光など見えはしない。この世は広くて美しく、興味は尽きないが、道しるべなど、どこにもありはしないのだ。(p18)
エリス・ピーターズの修道士カドフェルシリーズの短編集。
「ウッドストックへの道」「光の価値」「目撃者」の3つの短編を収録しています。
カドフェルはずっと前から興味があったのですが、読むのは初めて。とっつきやすそうという理由で、いきなり最後に訳出された短編集から読んだのははたしてよかったのか悪かったのか!? 初めて読むのですが、(個人的には)短編集から読んで正解だったかも。長編を読んだことはありませんが、短編集にもカドフェルのエッセンスが詰まっているように感じました。
特にこの短編集は、カドフェルが修道士への門をたたいた理由からじっくり読むことができて、非常に満足です。三つの短編の中で、やはり印象的なのは最初に収録されている「ウッドストックへの道」でしょう。40歳を迎え、人生の岐路に立たされたカドフェルのまとう黄昏のような雰囲気が何とも魅力的です。それでいて、事件はなんとも後味がいいというか、優しい幕切れというか、余韻を持たせています。
カドフェルの探偵としてのスタンスは、だれに対しても公平なところが、魅力であるのでしょうね。そんなカドフェルに、すっかり夢中になりながら読んでしまいました。
修道士になり、薬草園を任されたカドフェル。そんな彼がかかわる事件にもたらすものは、カドフェルのような老境の人間だから導き出される、優しさなのですよね。
12世紀のイギリスの雰囲気も、本当によく伝わってきて素晴らしかったです。修道士たちの暮らしぷりなどを読んでると、読者も修道院で暮らしているような何とも言えない味わいがあります。この本を読みながら、夕べの祈りが聞こえてくるような、そんな気分になりました。長編も折を見て読んでいこうと思います。
カドフェル、好きです。
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