(2012年感想58冊目)
キャサリン・ラングリッシュ 著 金原瑞人 杉田七重 訳
おすすめ度★★★☆☆(3・5くらい。北欧神話の香りただよう一作。)
「そうなんだよ、ヒルデ。やつはあれがほしくてたまらないのさ」
ラルフがうれしそうにいった。
「トロールの宝なんだ。父さんに幸運を授けてくれるんだ!」
「授けるのは不幸のほうよ」(p51)
図書館で、どうにも気になって借りてきた一冊。ラングリッシュの処女作です。
ペール・ウルフソン少年は、父親を失った。葬儀の日に、意地悪な双子の叔父が、ペールを引き取りに来て、そのまま連れて行かれた。
意地悪なバルドルとグリムの叔父兄弟は、ペールをさんざんこき使い、その一方で、何やら企んでいるらしく……。
トロールの結婚式!? でも、それって自分に何の関係があるのだろう……。
ペール少年の物語の始まりです。
何より、ペールがかわいそうというか、不憫というか、とにかくおじさんたちが本当に意地悪です。乱暴で、強欲で、怠け者で……。
物語も、おじさんたちと同じくらい乱暴なものを感じます。それでも、ペール少年とトロールのことが気になって、一気に読んでしまいました。
どこか暗い雰囲気はあるものの、読みやすい1冊です。まあ、児童書コーナーに置いてあった1冊なので、なんというか、世界名作劇場とか、そういったものに近いノリを感じますね。
最初は、とにかくペールが不憫で、このまま続くのかと思ったら、少女ヒルデの登場によって、救われた気持ちになります。そんなヒルデとともに、ペールはトロール王国に奴隷として差し出されてしまうのか!? 非常に気になる処で終わっているのも憎いですね。
また、この物語の特徴は、登場人物の多くが北欧の神話やサガなどから名前を付けられていることでしょう。
ヒルデ、エイリク、バルドル、ロキ、などなど……。
これだけで、一気に物語が神話のように思えてくるから不思議です。
とにかく、一気に読ませる力のある作品だと思います。
トロールは不気味だし、家に住む妖精ニースやグリーンティースなどといった妖精たちもどこか不気味で、魅力的です。
なんとも北欧の香りがただよう一冊。
北欧が好きな方なら、読んでみるのもありかな、と思いました。
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