原題
The Healer's Keep
ヴィクトリア・ハンリー 著 金原瑞人 石田文子 訳 横田美晴 表紙絵
お勧め度★★★★☆(厳しさの中にも優しさの光る物語です)
「レナイヤ師はきみとぼくの才能を判定してくださったようだ。きみはフィランだとおっしゃっていた」
サラは顔をしかめた。
「フィラン? 戦士なの? でもあたしはトリアンのように踊りを学びたかったのよ」(p209)
一年くらい前に読んだ著者の「オラクルの光」が地味に好きだったので、思い出したようにこちらも読書してみました。聞けば作者様の作品は緩やかな三部作をなしているようで、この本は2部作目の上巻。第1作目は図書館では貸出中だったのですよね。でも、冒頭に1作目のあらすじが載っているので、この巻から読んでも安心してはいっていけます。でも、第一作目から読みたかったかなあ……、とちょっと後悔。面白いんですけど、だからこそ余計に1作目も読みたかった。そうして「オラクルの光」がどこの国のお話だったかも気になってしまいました。また読み返そうかなあ……。
スリヴィーア国の奴隷の娘ミーヴと、ベランドラ国の王女サラ(サラヴェルダ)の物語。ミーヴは邪悪な貴族のモーレン候に狙われ、命からがらに逃亡した。一方サラは、癒し手としての才能を見込まれ、ヒーラーズ・キープ(癒し手の砦)において学ぶことになり……。夢と癒しと魂にまつわる物語です。そうして、愛と、光と闇の物語です。
まだまだ物語も序盤ながら、なかなか読みやすく、そうして読ませてくれる作品だなあと思いました。
ミーヴやサラには若干イライラさせられるところもあるけれど、先が気になってつい読んでしまう……。前作を読んでいなくても問題なく読めるところが嬉しいです。
ハンリーの物語は、出てくる登場人物にちょっとした不思議な力を持たせているのですが、ミーヴもサラも、自身の強大な力についてはまだよくは知らない……。そんななかで、一生懸命頑張る(サラは特に頑張ってるようには思えなかったけどそれでも頑張った)二人の姿がいいです。
また、少女も良いですが男の子たちも魅力的。
行きずりでミーヴを助けてしまった御者のジャスパー、サラの同級生でミーヴの知られざる弟であるドージャン、同じく同級生で、完璧に魅力的でありながら、良心なく他者を陥れる邪悪なバーン。
二つの運命が交差するとき、いったいどんなことが起きるのか、楽しみで仕方ありません。とくにミーヴとドージャンの出会いが楽しみだったりします。
私のお気に入りのシーンは、ミーヴがジャスパーに歌を歌ってあげるところですね。何と言うか、これは愛の物語なのだなあとしみじみ思います。
物語はオーソドックスな光と闇の対立を描いたファンタジーですが、どちらかというと女の子向きのお話だと思います。というか、女の子には是非読んでほしい作品です。
やっぱり、この作者さんの書くお話は好きだなあと思います。何でしょう、物語全体の雰囲気が好き。
下巻も楽しみに読みたいと思います。
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