原題
Odin's Monster
スーザン・プライス 著 当麻ゆか 訳
お勧め度★★★★☆(民話らしい民話に仕上がっていてそういうのが好きな人には。)
クヴェルドルフは考え込んだ。魔法使いであり、戦士である女王は、どんな夫を望むだろう? 決まっている、同じように魔法使いであり戦士でもある男だ。
スーザン・プライスの、北欧神話を下敷きにした民話風の物語。そう言いつつ、ほとんど彼女のオリジナルらしいです。
スーザン・プライスといえば、北欧神話や北国を下敷きにしたお話を多数書いている作家さんで、そっちのほうの骨太な世界観と描写には定評がありますね。この作者さんの書いた「エルフギフト」とか好きでした。
魔法使いのクヴェルドルフは、とある国の女王に自分を好きになってもらうため、当代一の語り部であるトードに、自分を歌うように脅迫します。しかし、底意地の悪い魔法使いを拒否したトードは、クヴェルドルフの恨みを買い、その後死霊に悩まされることになって……。
というようなお話。
作者のオリジナルといっても、ところどころちゃんと民話民話してるところがなんとも好感触です。末子がすぐれているとか、最後の老婆に関する真実とか。
それでいて、出てくる死霊は本当に恐ろしくて怖い。でもその死霊もクヴェルドルフに利用された存在であり、トードの力によって徐々に解放されていく様子が面白かったです。
それにしてもクヴェルドルフは、名前は恰好いいのに終始悪役に徹していていっそすがすがしいくらいでした。
久しぶりに彼女の話を読みましたが、相変わらず厳しい世界観の中に生きる人々と、起こる厳しい事件の数々に、、作者の力量を感じます。でも最後はハッピーエンドで、読後感のよい1冊です。でも、ちょっと題名詐欺かも。ほとんどオーディンは出てこないかな……。
この作者さんには、もっと北欧神話を題材にした話を書いてほしいですし、紹介してほしいですね。
北欧神話が好きな方には、お勧めの一冊です。
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