原題
Historien om en Moder ハンス・クリスチャン・アンデルセン 作 長島要一 訳 ジョン・シェリー 絵
お勧め度★★★★☆(4・5くらい。アンデルセン童話の中でもシビアな2編が堪能できます)
「この子、手元においとけるかしら。あんた、どう思う?」と母親が言いました。「まさか神さまがあたしの手から取ってったりしないでしょうね?」
すろと年寄りは、それは実は死神だったのですが、そうだともそうでないとも取れるあいまいなうなずき方をしてみせました。 (p7)
友人から譲り受けた絵本(ありがとう!)
アンデルセン童話の中でも、そこまで有名ではない「母親」と「モミの木」の二編を収録した絵本です。
表紙の死神さんが忍者に見えたのは秘密です。うん、読んでみたら確かに描写どおりだった!
この話はどちらも初めて読むお話だったのですが、なかなか(かなり?)シビアなお話でびっくりしました。とくに「母親」はつらい。
まさしく冬の寒さのような、身を切る厳しさが待っていて、人生とはかくも残酷で、理不尽なものなんだなあと思わされます。まあ、そのかくも理不尽で残酷な人生を描写するのが、童話という物のもつ使命というか、テーマなのかな、と思うわけなので、この「母親」の話はある意味童話の真骨頂なのかもしれません。
「モミの木」は、これまたいかにも童話らしい物語でした。つまりオーソドックスで、展開がわかりやすいという意味でしたが、なかなかお気に入りの話です。
あえてモミの木をテーマにするところが、なんとも外国人作家らしいよなあ、と感心したり。
無残に踏みにじられていくモミの木の、最後に残った頂上の星の輝きが、なんとも哀しく、モミの木の栄光と、狭い世界を象徴しているようでした。
しかし、やはりアンデルセン童話は好きだなあ。デンマークという北欧の国で生まれた話だけに、ところどころに感じる厳しさと寒さ、そうしてそのなかに輝く哀愁的な美しさには、胸を打たれるものを感じます。
絵本ですが、絵もなかなかいい感じです。すぐ読めるので、何か絵本が読みたくなった時などには、お勧めの1冊です。
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