原題
Lament: The Faerie Queen's Deception
マギー・スティーフベーター 著 武富博子 訳 鈴木康士 表紙絵
お勧め度★★★☆☆(3・5くらい。好きなんだけど、なんかどっちつかずで……)
「愛は強制できません……わからないんですか? むりやり人殺しをさせたり、民として支配したりはできます。でも、むりやり愛させることなんて、できないんです!」(p363)
題名と表紙とケルト音楽ファンタジーというところに惹かれて、珍しく購入した作品。作者のデビュー作らしいです。
ハープ奏者の高校生、ディアドラ・モナハンは、あがり症の女の子。大きなコンクールの前に気分が悪くなっていたところを、親切なフルート奏者のルーク・ディロンが助けてくれた。不思議な雰囲気のルークに惹かれるディアドラ。しかし、ルークと知り合って以降ディアドラの周りで不思議なことが起こるようになって……?
というようなお話です。
うーん、ファンタジーと言うよりはロマンスかなあ。ファンタジック・ロマンスみたいな感じ。でも後半明らかになるファンタジックな背景世界はとてもしっかりとしたファンタジーなので、何と言うかメイヤーの「トワイライト」とメリングの作品を足して2で割ったような感じでした。ヤングアダルト・ファンタジー作家として紹介されていたので、これはこれで需要のありそうな、新しいファンタジーなのかなあ、と思いました。というか前半がロマンス小説で、後半がファンタジー小説って感じでした。
文章は流れるようなみずみずしい文章だと思うのですが、非常に現代的な感性で書かれていて、訳もところどころ今風な感じでした。ただ、ヘンタイヘンタイ連呼するのはどうかなあと思いましたけど。
好きな題材、作風、テーマなのですが、どうも中途半端だった印象。それでも、好きだなと思わせる物は持っていますけれどね。本当、いろいろな意味で新しい作家さんなのかも知れません。物語はわりとオーソドックスなのですが、そういえばこういうファンタジーってなかったなあ、というような……。
ディアドラもルークも、ディアドラの親友のジェームズも、とっても物語の中で活き活きしていたし、そういうティーンの感性を上手く書くのが上手い作家だなあと思いました。
私が好きなのはジェームズですね。なんか彼のちょっとふざけたような言動が好き。ルークも、文面で書かれている通りすごくセクシーで、ドキドキしてしまいます。
いろいろ思うところはあるし、最後もちょっと強引というか、呆気なかったというか、もっと描写してほしかったとは思うのですが、すごく骨太な世界観を持っている作家さんだと思うので、処女作だし、今後に期待です。
あとがきによれば続編の出版も決まっているとのこと。続編の主役はジェームズだというのも、楽しみなところです。調べてみたらどうやら、今度はジェームズにロマンスがあるようですね。ジェームズのようなミュージシャンは、もっと悪いものを引き寄せる、という言葉がありましたが、それに関連するのかな。この物語でいろいろほのめかされている部分(ママとかおばさんの話とか)も明らかになるのかな、など楽しみです。
今後に注目していきたい作家さんの作品でした。ケルト音楽とかかけながら聞くと気分は盛り上がったかも。興味のある方は、読んでみると良いのではないでしょうか?
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