原題
The Book of Dreams
O.R.メリング 著 井辻朱美 訳 こみねゆら 表紙絵
お勧め度★★★★☆(いろいろ思うところはあるけど楽しめました)
「あたしのためにそれをしてくださるんですか?」ダーナの目に、じわりと涙がわいた。知らない相手の親切が身にしみた。「でも、あたしはあなたの一族ではありません」
老女は間髪入れずに、明快に答えた。
「われらはみな、一つの家族じゃ」(p50)
メリングのケルトファンタジー第6弾の下巻。これが本当にシリーズ最終巻ですね。
ボリューム満点で、読むのに時間がかかりましたが、一つの大きなシリーズを読んだ、充実した満足感と感慨があります。
ケルト・ファンタジーといっても、この巻では様々な土地に土着した妖精たちや、神々が出てきます。イヌイットもそうですが、北米のビッグフットとか、はては中国のドラゴンから、ついにはブッダの格言まで作中に顔をのぞかせたり。それがカナダのいいところだと言っていましたが、やっぱりカナダに舞台が変わったからでしょうか。
最初はこの民族なんでもありのちゃんぽん具合に困惑し、正直辟易もしていましたが、この1点こそが作者の伝えたかったことの一つなんだなあと思うにつれ、この混沌具合が癖になってきて読むことができました。
この巻は何と言っても「ジャン……!」って感じの巻でした。ジャン恰好いいですね。表紙が胸にしみます。
他の登場人物たちもそれぞれ幸せで、収まるところに収まって、大団円って感じでしたし。
正直、読んでいていろいろ思うところはありました。でも、最後は読んでいてよかったと思えるようなハッピーエンドでよかったです。その最後も、風呂敷を広げた割にはあっさりしていえうなあとは思いましたけれど。
作中でも、「終わりよければすべてよし」といったような言葉が出てきます。
これこそがまさに、この物語を象徴しているようにも思います。
いろいろ言いたいことはあるけど、読んでよかった、このシリーズに出会えてよかったと思えるような、自分の中では大切なシリーズが、一つ増えたことは確かだと思います。
1冊読むごとに、大好きな本が1冊増えていくような、そんな1冊でした。
このシリーズはお勧めです。
余談。この本(上巻)の最初に、マイケル・スコットに対する謝辞が載っていました。スコットといえば、やっぱりこの物語と似たような作風で書くファンタジー作家ですね。意外なところで作家同士のつながりが見えて、そういうところもなかなかおもしろかったです。
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