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紅茶好きの管理人が読んだ読書の記録のためのブログ。ネタバレありですのでご注意ください。
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ピポ王子 (ハヤカワ文庫 FT 18)
  • 発売元: 早川書房
  • 発売日: 1980/03/31

原題 Histoire du Prince Pipo, de Pipo le cheval et de la Princesse Popi
ピエール・グリパリ 著 榊原晃三 訳 内田善美 絵
お勧め度★★★★☆(手元に置いておきたい一冊)

むかしむかし、あるところに、とてもとても美しいお話がありました。ところが、だれもこのお話を決して書きもしなければ物語りもしませんでした。だれもこのお話を知らなかったからです。

フランスの作家、ピエール・グリパリのファンタジー。原題の全訳は、「ピポ王子と馬のピポとポピ王女の物語」です。もうこれだけで、なんだか楽しそうなお話、という気がします。

この物語で面白いのはお話の構造と語り口でしょうか。
最初にピポ王子とあまり関係のないうそつきの男の子の話が語られ、その次にこのピポ王子のお話がどうして生まれたかのいきさつが語られ、そうしてやっとピポ王子の物語が語られます。この、あるお話のお話、好きです。
そう、ピポ王子の物語は、ピエールさんが夢で見たけど、思い出せずに一時期忘れられてしまったお話なのです。

夢で見たお話だからなのか、本当に夢を読んでいるようなお話です。新生児デパートで父親と出会ったピポ、優しかった両親がある日いきなり意地悪な魔女になってしまう理不尽な展開……。
ピポは自分の優しかった両親を探し出すために冒険に出るのです。

子供向けのファンタジーではありますが、ところどころにファンタジーらしさを感じさせる良品です。
特に私は、内田善美さんの繊細で美しい挿絵が好き。この挿絵のためだけに、手元に置いておく価値があるようにも思えてしまいます。

それに、とてもとても美しいお話と語られているから、よくわからないけれど心の奥底で、本当に美しいお話のようにも感じてしまいます。
ピポがドラゴンになってしまう周辺のお話は、この物語のもっとも美しいエピソードの一つに感じます。お気に入り。

とはいえ、これは夢のようなナンセンスなお話ばかりではなく、作者のグリパリさんの哲学のようなものも充分に感じる事が出来る、奥深い1冊でもあると思います。

とにかく不思議な雰囲気の1冊。そういうのが好きな方は、是非読んでみて下さい。私も手元に置いておきたい本です。

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