原題
The Summer KIng
O.R.メリング 著 井辻朱美 訳 こみねゆら 表紙絵
お勧め度★★★★☆(読み進めるほどに面白い1冊)
「あたしにともせっていうの?」
「それは<夏の王>の仕事だ」
彼はもういっぺん身をかがめた。銀の海に浮かぶ、二つの暗い月のような目。
「その<夏の王>をさがしだしてほしいのさ」
メリングのケルト・ファンタジー4作目。日本で一番最初に邦訳された「妖精王の月」の後日譚にあたるお話です。
「妖精王の月」で妖精王が妖精界からいなくなってしまったわけですが、そのことが妖精界に波紋を投げかけているのです。
そんな妖精界に今回関わることになるのはローレルとオナーという双子の姉妹。
しかしオナーは1年前に、ローレルと喧嘩をしていた時期に事故にあって亡くなってしまいます。
妹の死を自分のせいだと責め続けているローレルは、妹の日記から、妹が死の直前に交流を持っていた人々(妖精)たちに接触をはかり、妹の代わりにとある使命を引き受ける事に……。
というようなお話です。
妹の死というものが物語の最初にあるため、そうしてローレルがそれで自分を責め続けているため、最初はどうにも重々しく哀しい雰囲気が覆う一冊となっています。
でも、そんなローレルが旅を通して、さまざまな人と出会い別れていく中で、徐々に変わっていく……。
その様子が嬉しく、また明るくもあるので、読み進めるたびに面白くなっていき、そうして素晴らしい最後へとつながっていきます。
最後のほうの展開は本当に面白かったです!<夏の王>の正体がわかったときには、思わずドキドキしてしまいました。<海賊女王>グレイス(グローニャウェイル)との交流も印象的です。
「妖精王の月」の登場人物もちらっと顔見せしてくれてうれしい。とくにミディールは前作でひとりだけちょっとかわいそうだったので、今回はいろいろ報われて良かった。おばばやダーラが出てきてくれたのも嬉しいです。でも「妖精王~」を読んでから結構間が空いていたのが悔やまれます。やっぱりこのシリーズはいろいろつながりがあるので、読むなら一気読みがいいなあと思ってしまいました。
現代と過去、そうして妖精界を行き来する物語ですが、ところどころにファンタジーの精髄みたいなものが感じられて、やっぱりとても素敵な1冊になっています。
メリングの物語はどれも少女漫画っぽいですが、この話が、読んでいて一番漫画に向いてそうだな、と思った1冊でした。
とにかく本当に最後がいい。最後まで読むと、ローレルと一緒に私たちまで、心が軽くなっていくような気もちを味わえます。
次の作品も楽しみに読みたいと思います。
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