津原泰水 著
お勧め度★★★☆☆(3・5位。いろいろとおしいなあと思った作品です。)
「澪さん、人形屋だろ。人ってなんで人形を作るんだと思う。なんで自分たちに似せたものを作ったりする」
「わからない、そんなこと、訊かれても」
人形を題材にした連作短編ミステリ。書店で文庫を見かけ、気になったので単行本で読書。
題名の通り人形屋を舞台にした物語です。小売りもやっているが、主な収入源は人形の修復。
祖父から半ば無理やり人形堂を譲られた主人公の澪と、人形が大好きな一風変わった若者、富永君。そうして経歴に謎のある凄腕の職人師村さんの3人が主な登場人物です。
物語で扱う人形の題材は、いわゆる青い目のお人形から、チェコの操り人形、そしてラブドールまで多彩な物でびっくり。人形が好きなのでなかなか楽しめる興味深い1冊でした。
でも、いろいろおしいなあと思ってしまった作品ではあります。
まず第一に、この題材を扱うのに連作短編という量ではちょっと書き込み不足かなあと感じました。
人形に関しても、ある程度知識があることを前提に書かれているように思います。もっと基本的なことも説明しても問題ないと思いました。
あと、分量の薄さからくる、登場人物の書き込みの足りなさも気になりました。
まあ人物そのものの事が、物語全体を通した一つの大きな謎になっているのですが、結果的に登場人物の個性が薄く感じてしまいました。
ミステリ要素もごくごく薄いもの。分類的には「日常の謎」系のお話です。物語全体を通した謎が提示されるところがいいですね。
収録短編は「毀す理由」「恋は恋」「村上迷想」「最終公演」「ガブ」「スリーピング・ビューティ」の6編。
その中でもわたしのお気に入りは、ラブドールを題材にした「恋は恋」でしょうか。人形への愛情が伝わってきた作品で、温かみのある物語が好みでした。
決して面白くないわけではないのですが、どうにも今一歩という感じのお話です。
でも、続編が出たら読んでみたいな。
いっそ短編ではなく、長編とか中編にチャレンジしてみたらいいのではないかなあと思った作品です。
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