原題 The Nightrunner Series1 Luck in the Shadows
リン・フルエリン 著 浜名那奈 訳 由貴海里 絵
お勧め度★★★☆☆(キャラが好きな人にはお勧めできる本です)
「あなたはぼくのことをほとんど知りません。どうしてぼくなんかを連れていこうとするんです?」
「確かにわたしはお前を知らない。おそらく、お前を見ていると思い出すせいだろう──」
「あなたの昔の知り合いを?」アレクは疑い深く口をはさんだ。
「昔のわたしをだ」
刊行当時から表紙のイラストとC・NOVELS初の翻訳ものということで気になっていたのですが、今になって思い出したように読書した1冊。
表紙の雰囲気が良いですね。でも本文中に挿絵がなかったのが残念でした。口絵と登場人物紹介はあるのですが……。
翻訳やキャラクターの造詣はまるで日本人が書いた本であるかのようで、翻訳ものが苦手な方でも割と読めるタイプの文章だと思いました。
あらすじとしてはまさに本の裏とかいろいろなサイトの紹介文に書いてある通りなので、こちらではあまり触れません。
無実の罪で投獄された猟師の少年アレクが、謎の美青年サージルに救われ、密偵である彼の弟子となって旅をする……。しかし、知らずに持ち帰った宝のせいでサージルの身体に異変が。アレクはサージルを癒すため、ナイサンダーと呼ばれる老人を訪れるため旅を続ける……。
というような話。
一応剣が出てくるファンタジーですが、個人的にこのシリーズの最大の特徴は全編に漂うリリカルなボーイズラブ臭のように思います。
サージルもそう言った嗜好の持ち主であるということがにおわされたり……。上手く言えないのですが、全体的にすごくBLっぽいんですよねえ。
アレクとかいかにも「受け」っぽいキャラなので、個人的にはあまり好きになれないんですよね……。
世界観やストーリー自体はよく作りこまれたファンタジーですが、合間合間にそういうものがにおわされるため、そういうのがお好きな方や、キャラクターが好きになれないと読むのがつらいかも。キャラクターが好きなら、間違いなく楽しめるはずです。
サージルは密偵として時に吟遊詩人になったり、あるときは老婆になったり、あるときは女装したり、さまざまな顔を見せてくれます。なんでもそつなくこなしそうなサージルですが、意外と精神的に脆い部分があって、そこがまた良いですね。アレクのほうがよっぽどたくましく育ちそうです。
個人的にこの小説でたびたび出てくる、チップを渡すときの、「そのお金でわたしの健康を祝して飲んでちょうだい」って言い方が何だか好きです。
それでも個人的には、まだまだ様子見って感じのファンタジーでしょうか。嫌いではないのですが。
翻訳も読みやすいのですが、大事な事件がさらりと書かれてたりするので、え、いつの間にそんなことに?? ってなりがちなのが玉にきず。まあ、処女小説らしいので、次第に改善されると思いますが。
何よりイラストがきれいですし、面白いシリーズだと思います。そういう描写に抵抗がなく、気になる方は読んでみてはいかがでしょうか?
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