原題 The Magic Circle
ドナ・ジョー・ナポリ 著 金原瑞人 久慈美貴 共訳
お勧め度★★★★☆(ヘンゼルとグレーテルの良パロディです)
魔女の目は永遠に乾いたまま。それが定めだ。ああ、汚れない心からあふれる涙は、人に与えられたなんとすばらしい祝福であることか! また涙を流せるようになれるなら、代わりにわたしはなにを差し出そう?
題名とあらすじと訳者さんに惹かれて、図書館から借りてきた本。
世界的に有名なヘンゼルとグレーテルのお話を、魔女の視点から描いたお話です。しかも魔女が魔女になる前の話から描かれます。醜いが普通の善良だった産婆が女魔術師になり、そうして魔女になって、お菓子の家ですむ……。ヘンゼルとグレーテルが出てくるのは後半のほうからです。
あらすじなどは童話のほうとほとんど変わらないのに、ああ、こんなヘンゼルとグレーテルもありかも! と思わせてしまうところが、作者のすごいところですね。
また、本書には様々な愛が描かれます。
母親としての愛、キリスト教徒としての愛、神への愛、弱いもの、小さいものに対する愛などです。
名前で呼ばれることもない、そういう意味で非常に童話的な主人公の醜い魔女の、そうした愛であふれていて、心にぐっとくるものがあります。
ヤングアダルト向きの本らしいですが、魔女が非常に子供を大切にする母親なので、内容的にはお母さんが読んだほうが心に来るものがあるのではないかと思います。
でも私のお気に入りは、主人公の魔女と彼女が救ったお役人の息子のペーターとの心の交流です。
ヘンゼルとグレーテルに対しても、日本ではグレーテルが妹で兄がヘンゼルですが、外国ではグレーテルがお姉ちゃんなのが一般的とか、勉強になりました。
あまり厚い本ではないのですが、内容は濃厚です。ヘンゼルとグレーテルが好きな方は、お勧めの一冊です。
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