原題 The Kestrel
ロイド・アリグザンダー 著 宮下嶺夫 訳 丹地陽子 表紙絵
お勧め度★★★★☆(多くのことを考えさせてくれるシリーズです)
「名誉を重んずる人々は」モンモランは言った。「約束を守るものです」
コンスタンティンは彼に向ってほほえんだ。「国王って、約束を守らない人種なんだよ」
ウェストマーク戦記の2巻。前回は冒険ものという感じでしたが、今回は戦争ものの色合いがだいぶ濃いです。しかもゲリラ戦です。
作者様は第二次世界大戦の経験者で、レジスタンスとして活動した時期もあり、「この本に書かれていることは、私が体験したこととあまり変わらない」というようなことを述べています。
そのため、戦争の痛々しさが伝わってきたり、少なくない血が流れたりします。でもそれは戦争の中では当たり前で、非常にあっさりとしてたりして、その分残された人々の痛みなどがよく描かれています。
戦争の中でテオは、ジャスティンのゲリラ部隊に自らの意思で参加します。
そうして戦争に取りつかれ、本人も気づかずに、とにかく人を殺したいという気持ちに駆られます。
そうして彼は冷酷で残忍なケストレル(鳥の名前)大佐として恐れられていくようになり……。
愛するミックルと離れ離れになり、お互いの安否に気をもむ二人。二人が望むのはささやかな幸せなのに、戦争という状況がそれを許してくれません。
愛する女性や友の死などがよく描かれています。
戦争にあこがれていたコニー王も、戦争というものを実際に体験してみて、それを早く終わらせたいと願います。
そういった、さまざまな出来事や感情から、私たちも多くのことを考えさせられます。
アメリカではこの本は子供たちの推薦図書にも選ばれているそうなので、是非読んでほしいところです。もちろん、大人が読んでもたくさん気づかされるところはあります。
物語の最後で、戦争は終結を迎えます。人々にはその状況に置かれてしまえば、善悪を判断することは難しいのだと思います。それでも、手さぐりに進んでいくのが、歴史というものなんでしょうか。
とにかく戦争というものの描写が痛々しいですが、物語も後半になってきたころはますます面白く、活き活きとしてきます。
興味がある方は、是非読んでみてください。
続きも気になります。
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