- 煉獄姫 (電撃文庫)
- 発売元: アスキーメディアワークス
- 価格: ¥ 620
- 発売日: 2010/08/10
(2012年感想50冊目)
藤原祐 著 kaya8 イラスト
おすすめ度★★★★☆(4・5くらい。万人には勧められないかもですが、私は大好きです)
そして、彼女は。
「だったらめいれいするわ、フォグ」
彼がここへ来て初めて、年相応の、幼い笑みを浮かべ。
嬉しそうに──本当に嬉しそうに、言ったのだった。
「わたしと……ともだちになって」 (p22)
ずっと気になっていた本を、お友達がプレゼントしてくださいました。(ありがとうございます!)
瑩国という、英国をモチーフにした架空の王国で起きた産業革命を背景に進んでいく物語。産業革命の背景にあるのは、煉術という、煉獄の香気を使用した術であった……。
煉獄の香りにあてられたものは徐々に身体をむしばまれていく社会で、特異体質をもつ王女アルテミシアと少年騎士フォグは、国家転覆の陰謀を阻止しようと活動するが…!?
あらすじはだいたい上記のような感じですが、あまり説明できていないなあ……。
これは、面白かったです! ライトノベルとしての質も非常に高いと思います。固有名詞以外のカタカナに全部漢字が使われているのも、個人的には好感でした。
昨今の、キャラ萌えや会話のテンポを重視した多くのライトノベルと違い、地の文が非常に多く、世界観もしっかりしていて、安心して読むことができました。
何より、ダークな感じがとってもたまらないです。塔の中に長いこと閉じ込められていた王女アルテミシアの、純粋だけど歪んでしまった人との距離感、彼女を守る少年騎士フォグもまたいびつな存在として語られます。彼が煉術に耐性のある理由は圧巻でした。面白かった!
また、アルテミシアがフォグやイオ以外に初めて友達になった少女が実は……、というのもいい。
なかなかに、この関係がどういう風に展開していくのか、続きが気になります。
イパーシとトリエラもどうなってしまうんだろう。
とにかく、しっかりした世界観、雰囲気のある文体、キャラクターはちょっと弱いかなと思うものの魅力的で、とても安定した水準を保っている本です。
まだまだたくさんの人が出てきそうな雰囲気ではありますが、アルトはかわいいし、フォグは最後のほうで明かされた秘密にぐっと来ました。
なにより、この独特な世界観がいいですね。
欲を言えば挿絵が、アルトとフォグをもっと書いてほしいのと、フォグが若い! というのが気になるところでしょうか。
でも、面白かったです。
囚われの王女と少年騎士、という組み合わせがまさにどんぴしゃでした。
ダークなので万人には勧められませんが、そういうのが好きな方にはおすすめです。
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