栗本薫 著 天野喜孝 表紙絵
お勧め度★★★★☆(4・5位。正統派ヒロイック・ファンタジーです)
表題作は、今は亡き栗本さんが初期のころに書いた作品です。
グイン・サーガの数千年後を舞台にした物語で、闇王国パロの第二皇子であるゼフィールと、草原の国トルースの貴族だったヴァン・カルスの二人旅が描かれます。彼らをおそう想像力豊かでありながら想像に絶する冒険が描かれます。
久しぶりに栗本さんの著作を読みましたが、この本は良いですねー。
なんというかハワードが書いた征服王コナンシリーズの正当なる脈絡というのを受け継いでいる気がします。
物語自体は、カルスとゼフィールは(読者にはわからない理由で)なぜか生き別れてしまい、やさぐれた船乗り風のカルスが竪琴弾きの歌うサーガから自身の青春の記憶を追想するという体裁です。
このちょっとくらい雰囲気が、まさに薄暮(トワイライト)って感じです。
若い日のカルスは草原の男らしく、単純明快でありながら賢く、ゼフィールの忠実な守護者です。
ゼフィールは美しく冷たく魔道に通じていながら、どこか子供らしいところがあって、この二人のコンビは良いですねー。
作者様の美少年趣味というかお稚児趣味? がちょっと鼻につきすぎるような気もしますが、まあいいんじゃないでしょうか。
物語自体は結構エロでグロで暗くてどろどろしているし、文字もページいっぱいびっしりなので、読むのがちょっと疲れる! でも面白い! って思えます。
地名や神様の名前などはグイン・サーガと同一のものもあり、ファンには嬉しいですね。
カローンの蜘蛛、蛇神の都、滅びの島、暗い版図、双子宮の陰謀の五編を収録。
私のお気に入りは、滅びの島かな?
続きを読むことのできないシリーズですが、ぜひこの巻だけでも読んでみてください。
以下追記で少し。
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・カルスがゼフィールにわりと冷たくされるのですが、カルスはゼフィールに冷たくされるとかわいいとか思うので、まあいいコンビなのではないでしょうか。
結構頻繁にそんなこと思うので、こいつの頭は常春か! とか思っていたら、ゼフィールはカルスの想い人の生まれ変わりなのね。
まあ、なら仕方ないのかな??
・そんなゼフィールに愛着のあるカルスですが、関係はあくまで保護者と被保護者。カルスにキスするゼフィールとぎょとっとするカルスがちょっとかわいい。この巻で一番印象に残ったシーンだった。
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