- 太陽の石
- 発売元: 東京創元社
- 発売日: 2012/10/30
(2013年感想56冊目)
乾石智子 著 羽住都 表紙絵
おすすめ度★★★★☆(4・5位。完成度は言うまでもなく、なんとも切ない一冊。)
「ゲイルとテシアのときにぼくらは間違った。正す責任はぼくらにある」(p199)デヴュー作、「夜の写本師」で日本のファンタジー界を瞠目させた乾石智子さんの第三長編(読む順番としては6冊目)
「オーリエラント」シリーズの3作目でもあります。
田舎の村で拾われっ子として育ったデイスは、ある時太陽の石(オルヴァン)を拾った。そのことが、彼の記憶を徐々に蘇らせていき、深き闇の根付く運命へと導いていく……!
というお話かな。
乾石さんはもう本当大好きな作家さんで、これで全作品読みましたが、ハズレがない。これは本当にすごいことだと思いました。読み始めるのに時間はかかるかもしれないけれど、読んだらその面白さは保証されています。重厚なファンタジーが読みたい時には是非。
今回の物語は、壮大な(壮大すぎる?)兄弟喧嘩と言ったところ。イザーカト9兄弟がメインのお話ですが、きょうだい以外の登場人物(ネアリイやピュリアン)がいい味を出しまくっていて! 好きでした。
兄弟のなかで好きなのは末っ子の男二人ですね。特にイリアは本当に好きでした。
このシリーズ、魔術師が背負うことになる深い闇を毎回痛感させられるのですが、今回はなんとも切なかった。
兄弟って、すごく感情的には複雑で、仲がいいとか悪いとかでは言い切れず、愛情や妬みや、理解と理解の不足などが同時に混在したりするのですよね。
9人もきょうだいがいればそれは如実になるわけで、きょうだいならではの心の闇や愛情の書き方が、本当にリアルでした。
それにしても乾石さんの長編は、女の人の書き方が本当に魅力的。ネアリイもナハティも真逆の女性でしたが、どちらも魅力的でした。
個人的にはしかし最後、彼ら(ネタバレになるので誰かは書きませんが)を生き残らせたのが、乾石さんなりのメッセージであり、希望を託したのかなあと感じました。
乾石さんの描くストーリーは本当に重厚で魅力的。そうしてユーモアや希望もある。本当素敵です。
これからも追いかけて行きたい作家さんです。次回作も楽しみ。
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