菅野雪虫 著
お勧め度★★★☆☆(3・5くらい。なかなかおもしろく、安心して読めますが、ちょっと物足りないかも)
「ソニンは王子であって王子ではないものに選ばれたのだのだと、わたしは思っています」
「それが、あなたの言う運命ですか?」(p154)
菅野雪虫さんのシリーズものファンタジー、「天山の巫女ソニン」シリーズの第一巻。
以前読んだ羽州ものがたりがよかったので、こちらも読んでみました。
生まれたときに才能を見出され、天山で巫女として育ったソニン。12年後、しかしそれは見込み違いという判断をされ、再び地上に戻ります。そうして家族と暮らしていると、都の王子に出会い、侍女に望まれて……。
ソニンは陰謀に巻き込まれていくのです。
というような話。
まず、文体がですます調であることにびっくりした! それを知らなくて読んだから、最初は慣れるまで時間がかかりました。でも、慣れてくると独特の優しい筆致が好きになれた1冊です。まるで昔話を読んでるような……。味気ない言い方をすれば、小学生の教科書を読んでるような気分ともいえますが、とにかくそんな感じです。
もともとこの話のもとになったお話は「ソニンと燕になった王子」だそうです。本当、おとぎ話みたいな題名ですよね。だから読み進めるにつれて、このですます調の文体が逆に良いなあと思いました。
お話は、安心して読める王道な感じのお話でした。だいたい、落ちこぼれと言われた主人公が本当におちこぼれだった作品ってあるんだろうか……。まあそこは皆さんの期待を裏切らない感じになっています。
面白く、すらすらよめるのですが、やっぱり話の展開が早すぎるかなあというのが残念です。明らかになっていない謎もありますし。なぜソニンが王子の言葉がわかるのか、とか。天山の門が開くのと同じ原理なのかなあ。
シリーズものということで、今回はほんの顔見せ程度といった感じでしょうか。クワン王子や、イウォン王子の兄王子たちにも注目していきたいですね。
でも、一番好きな登場人物はミンだったりします。
王子が燕になって、それを探しにソニンが旅するシーンなんかは、ちょっと幻想的で、ファンタジーって感じがしました。お気に入りです。
読みやすくて面白い。児童書には欠かせないものを持っている作家さんだと思いますが、いつか大人向きの作品も読んでみたいなあと思わせる作家さんです。
次の巻にも期待です。
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