原題 Summer's End
アン・ローレンス 著 金原瑞人 訳 佐竹美保 絵
お勧め度★★★★★(とても素敵。すっかりお気に入りの1冊です)
「子どもというのは、むかしの不思議なことをおぼえているらしいんだ。ほかのおとながみんなわすれてしまったようなことまでね。」
「でも、森番はいったい何者だったのかしら。」
リジーが聞いた、
「森番もきっと『あの連中』の仲間だったのよ。」
作者が書いた「五月の鷹」が好きで、この本もとてもいいと聞いて手に取ってみました。
夏の終わりに、ベッキーたち三姉妹のすむ宿屋に流れ者のレノルズさんがやってきた。姉妹はレノルズさんに「お家賃」として何かお話をしてくれるようにねだる。そこでレノルズさんは、幽霊と恋に落ちた人間の話を聞かせるのだった……。
というようなお話です。
いやー、この本は本当に良かった! 最初の1ページを読んだだけで、思わずすぐに惹きつけられてしまいました。
季節の変わり目ごとに、レノルズさんがお話をするという連作短編の体裁なのですが、どの話も趣があってとってもいいです。
個人的には、「怖いもの知らずの少女」「チェリー」「ウィリアムの幽霊」「ジェムと白い服の娘」がお気に入り。また、読みたいと思っていたスコットランドのバラッド、「タム・リン」に材をとったものもあります。
このお話がどれもロマンチックで、でも切なくて少し怖い(幽霊の話ですからね)
そこがたまらなくつぼなのです。もう大好き。
合間に3姉妹の成長が見て取れるのもいいですね。サマーズエンドと言うのは、子供時代の終わりという意味にも取れると思います。そんな、夏がおわり、秋に向かっていく…。一抹のさみしさと決意と、すがすがしさが感じられる余韻のある終わり方も素敵。
読みやすいし、佐竹さんのイラストも素敵だし、個人的には文句のつけようがないくらい面白かった。でも、欲を言えばもう少しベッキーたちのことも書いてほしかったかな。ほんの数ページずつしか書かれていないのがもったいない……。
同じような話が続くというのも欠点かもしれないですが、このお話の雰囲気が気に入ればたまらない1冊です。
特に、女の子が主役の話が多いので、女の子に読んでほしい1冊。
アン・ローレンスが長くない生涯の中で残した作品の中でも、自信をもってお勧めできる1冊です。
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