朽木祥 著 山内ふじ江 絵
お勧め度★★★★☆(4・5位。相変わらず素敵な本です)
<誰だったのだろう彼は。彼は誰だったのだろうか>
麻は、耳に聞こえない音楽を聞き、目には見えないはずの絵を心に焼き付けた。
冬の日の陽だまりのような司のまなざしとともに、月の光の下の八寸の姿とともに、麻は、この絵をきっと忘れないだろうと思った。
以前に読んだ「かはたれ」の正統な続編。「かはたれ」で活躍した八寸や麻などのその後(四年後)が描かれます。なので、この本を読む場合はまずは「かはたれ」からどうぞ。そうでないと意味がわからない話なので……。
そして今回は題名にもあるとおり、河童の不知のお話です。不知が戦争をきっかけに失ってしまった人間の友人、司との思い出にまつわるお話です。
今回のお話もよかったです!
前回は絵がキーワードだったけど、今回は音楽がキーワード。音楽と、月光と、黄昏の光の美しく不思議な物語です。
ただ、前回に比べると文体の鮮明な美しさは印象が弱まったかなあと思います。そこがちょっと残念。もちろん、それでも十分に素敵なお話なのですが。
今回は人間の世界の学校にまつわるお話なので、より現実的というか、戦争の話なども絡んでくるので、なかなか深い話になっています。
一番心を打ったシーンは。麻と河井君の再会のシーン。何気なく言った言葉が、受け取る側にとってはとても大きな一言で、その後を変えてしまうこと、ありますよね。河井君良い人で心がほんのりしました。
不知と司の友情も切ない。幻みたいで、だからこそ本当に大切なひと時だったんだろうな。
とにかく、「かはたれ」を読んだら「たそかれ」まで一気読み間違いなしのシリーズです! とても面白いです!
絵本としても、絵のほんわかとした感じが、また作品の雰囲気をひき立てています。
いろいろなことを考えさせてくれた、心にしみる、本当にお勧めの一冊です。
もう続編はないんだろうけど、いつかまた再読したいな。
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