朽木祥 著 山内ふじ江 絵
お勧め度★★★★★(よかった! ちょっとじんわりし、いろいろ考えさせられる切ない本です)
<「たいそう違う」って、いったいどこが違うんだろう>
八寸は、手を振って出ていく麻の名残惜しそうな顔や、八寸やチェスタトンを見るとぱっと輝く表情も思い浮かべた。一緒にいたらおもしろかったり、温かい気持ちになったり、ひとりぼっちで切なかったり──麻と八寸は、同じ気持ちをたくさん持っていた。
図書館で面展されていて読んだ一冊。これはよかった! 本当によかったです!
天涯孤独になった子供の河童の八寸は、人間界に修行に出されます。そうして人間界では、猫としてすごします。
八寸を拾ってくれた少女麻は、少し前にお母さんを亡くしたばかりで、さまざまな悩みを抱えていた……。
麻と八寸の心の交流を描いた話です。
まずは、なんといっても文章がきれいです。その美しい文章で、美しさとは何か、美しいことを美しいと感じる心はいったいどこから来るのか、などを何度も、痛切に語りかけてきます。
きれいな言葉で書かれたそれらの問いが、むしろ切ない音楽のように反復して、心に深く問いかけてくる絵本です。
美しいものを美しいと感じることに自信が持てないっていうのは、なんてつらいことだろうなと思います。でもそれは、この本を読めば、誰もが感じたことのある感覚の問いとして投げかけられます。
最初は文章や世界観に入っていくのがちょっと時間がかかるけど、あとは一気読み。
とにかく、きれいで、しんみりする、静かなのですが、深くしみわたるお話です。
お母さんを亡くして心を閉ざす麻や、彼女と真剣に向き合うお父さん、麻のそばにいて彼女を慰めるチェスタトン、そうして八寸とのひと夏の心の触れ合い。
最後は別れなければならない、幻のような出来事だけど、確かに残る大切な思い出……。そう言った思い出って、いいなって思います。
子供にも、大人にも読んでほしい、そんな素敵な絵本です。お勧め。
にほんブログ村[0回]
PR