のりす・はーぜ 著 竹宮恵子 イラスト
お勧め度★★★☆☆(面白いんだけど、納得できない)
(アイシテル……)
微かに動いたマシュウの唇を、アンリは生涯忘れまい、と心に誓う。
(愛してる。あいしてる。アイシテル……)
「神の子羊」3作目。最終巻です。
前の二作は純粋に面白いなー、と感じることができたけど、正直この巻は微妙……、というか、シリーズ通して見ると微妙……、という感じがぬぐえない。
それは、シリーズ通して、いったい何が描きたいのかわからない、という一点に尽きるのですが。
一巻目はセルジュの生涯を追う話だったのに、2巻目はアンリとフランの話にシフトし始め、3巻目はアンリとマシュウの少年愛ものになる……。
単体で読めばそれなりに面白いのですが、この3巻はなんか悪趣味な登場人物や描写が目立ってしまって、正直ちょっと不愉快だった。(少年を痛めつける趣味の異常な同性愛者しか出てこないんだもの……)
物語の結末も微妙。セルジュの過去は丸投げだし、マシュウは結局変質的なパトロンに薬中にされてぼろぼろになって、しかもとってつけたようにジルベールの血筋とか言われても、「何この風木の劣化版?」とかしか思えなかった。
マシュウは正直良い人すぎて死んだのが悲しいし、そもそも風木がああだったから、アンリとマシュウには幸せになってほしかった。それなのに結局女の子とくっつけてハッピー・エンドにするあたり、「つまり作者さんはフランが描きたかっただけでしょう?」とか思ってしまう。
話に一貫性がないし(そもそもマシュウはそれならもっと早く登場させるべきだったと思う)、悪趣味に風木をなぞっているだけだったという印象です。
面白かったは面白かったけど、なんか納得できないものが残ってしまった。
個人的には、なんとも残念な一冊でした。
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