原題
The Spider's Web
ピーター・トレメイン 著 甲斐萬里江 訳
お勧め度★★★★☆(舞台となるアイルランド自体が最大のミステリというミステリです)
「それとも、これらの出来事をつなぐ何かが、存在しているのでしょうか? さまざまな出来事を辿ってゆけば、全てはその中心にひそんでいる邪悪なる核心につながっているのかしら? ちょうど、蜘蛛の巣のように」修道女フィデルマシリーズの蜘蛛の巣の下巻。
上巻では殺されたのはエベルとティファの二人だけでしたが、下巻ではさらに3人の犠牲者が出ます。
正直ミステリとしては、下巻の半分も読めば犯人の目星がほとんど付いてしまう感じでした。
でもそれだけ文章の記述は公平ですし、何よりこのシリーズの最大のミステリは舞台となる7世紀のアイルランドそのものなのだなあと思いました。
この巻の一番の見どころは、犯人に命を狙われ、瀕死の状況に陥るワトソン役のエイダルフと、そんな彼を前に取り乱すフィデルマでしょう。
普段の誇り高い冷静なフィデルマのこのような様子が見れるのは、読者としてはたまりません。
この二人のコンビ、すごく好きです。徐々にはやっぱり恋人同士になっていくのかな?(フィデルマはこういうことにはトラウマがあるようなので、難しそうですが)
犯人あてのミステリというより、やっぱりアイルランドの歴史と風土を楽しむといった印象。
そのために解説や訳注を読むのも楽しいですが、この下巻はそういうのを読まないほうがいいかもしれません。あちこちに結構なネタバレがあり、興を殺がれてしまう部分があります。
でも、他の作品も読みたいと心から思うくらい、楽しい作品でした。
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