(2012年感想76冊目)
神沢利子 著 大島哲以 絵
おすすめ度★★★★☆(透き通った、美しく悲しい愛の物語です。)
手をふり、声をあげ、子どもたちは白鳥をよんで野をかけた。
それは、かつてのむすめ、ヒシクラ・サッカ、二度とかえらぬあのむすめのしぐさ、そのままであった。(p188)神沢利子さんの美しく悲しい創作童話ファンタジー。
図書館でなんとなく目がとまり、借りてきました。
これは、いいですね!
ツンドラ地帯を舞台にした。漁師の息子の男と、彼のもとを訪れ妻になった不思議な美しい娘との、愛と蘇りの物語になっています。
とにかく、文章がツンドラ地帯の冬のように冴え冴えとしていて、読んでいてぐっと世界観に引き込まれます。
物語も、どちらかというと悲しみが覆っているのですが、その悲しみさえも美しくて、胸を突かれます。
そして。絵もいいですね。この絵が好きな方は、手にとって損はない作品だと思います。美しく、繊細な絵です。
私は美しく不思議なむすめ、ヒシクラ・サッカが好きです。本当に、彼女の美しさ、異質さが描写の間隙から伝わってきて感激。
また、作中にふんだんに挿入される歌も、とても雰囲気があって素敵です。
個人的には、モコトルなにとる綺麗なよめご。って歌が好きです。
とにかく、悲しくて、美しくて透き通った湖のような。良質な物語です。
大人にも子供にも読んで欲しい、素敵な一冊となっています。おすすめ。
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