原題 Westmark
ロイド・アリグザンダー 著 宮下嶺夫 訳 丹地陽子 表紙絵
お勧め度★★★★☆(アメリカ的なファンタジーでありながらしっかりとした政治ものという感じが目を惹きます)
「どちらの場合にしても、きみは、われわれと違っているわけではない」フロリアンは、ちらりと皮肉っぽい笑みを浮かべた。「みんな怖いんだ。怖くてしかたがないんだよ。怖いと感じることさえ怖がっているんだ。きみだって、それに慣れるよ」
「ぼくは慣れたくない」テオはさけんだ。
プリデイン物語の作者として有名なロイド・アリグザンダーの別シリーズ。
日本では、2007年の作者の死後に翻訳され紹介されました。
主人公は印刷工見習いの少年テオ。しかし、国では宰相カバルスの独裁政治が敷かれており、印刷業は国の違反として取り締まられている。
ある時彼の働く印刷屋にも警察が押し掛け、テオはそれに逆らい、反逆者として手配されたために逃亡する。
その先で彼は気のいいいかさま師のラス・ボンバス伯爵や、浮浪者の少女ミックル、そうしてレジスタンスの若者のリーダー、フロリアンなどと出会い、彼らとの出会いによって王国を揺るがす争乱に巻き込まれていく……。
という話。
いやー、プリデイン物語が自分の中で大好きすぎるので、これもどうだろうと読むのをためらっていたのですが、ぐいぐい話が進んで面白かったです!さすがですね。
まあアリグザンダーの本なので、展開はちょっと読めてしまって、ドキドキ感はあまりないかもしれませんが。
主人公のテオは名誉や道徳を尊ぶ少年だったが、彼が最初に出会ったのは人をだますことが仕事のいかさま師。もちろんテオも生きるために彼らに協力します。
そうして次に出会ったのはレジスタンスのリーダー。そこで活動するので、やっぱり人殺しとかに手を染めなければならなくて、やっぱり葛藤します。
テオは独裁政治をしている宰相に対して、「ぼくはぼくの良心にかけて、彼を殺したくない。でも、やっぱり良心にかけて、のうのうと生きていてほしくもない」というようなことを言います。
それは英雄的でありながらも、とても等身大な、普通の少年の考え方なのではないのでしょうか。
この物語で書きたいのは、そういう等身大の人間としての理想なのかなと思います。
登場人物は非常にアメリカ的。なんというか、「ベルガリアード物語」が好きな人は好きなんじゃないでしょうかと思います。
ミックルはかわいいし、伯爵は本当に気持ちのいい悪党です。
私が好きなのは、生まれながらに人を惹きつける才能を持つフロリアンと、彼と一緒に行動するその仲間たちかな。こういうキャラに弱いのよね。
そこにそれぞれ政治的に立場を異にした登場人物たちの理想や考え方や目標が絡み合って、より厳しく、現実的に人々は成長を余儀なくされます。
政治ものファンタジーというのでしょうか。
聞いた話では、2巻3巻とテオも性格が変わってしまい大変なことになるらしいので、どうなるか本当に気になる。
王道でありながら、今までとは違う角度で語られるファンタジーだと思います。丁寧に作られている本だと思うので、とてもお勧めです。
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