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紅茶好きの管理人が読んだ読書の記録のためのブログ。ネタバレありですのでご注意ください。
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蜘蛛の巣 上 (創元推理文庫)
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  • 発売日: 2006/10/24

原題 The Spider's Web
ピーター・トレメイン 著 甲斐萬里江 訳
お勧め度★★★★☆(アイルランドやケルトが好きな人には★5)

「キルデアのフィデルマ、あなたの困ったところは、ご自分の専門において、優秀でありすぎる、という点ですな。何しろ、あなたの叡智は、今やアイルランド五王国中に響きわたっているほどだ」
「そのような評判、あまり嬉しくはありませんわ」と彼女はつぶやいた。

修道女フィデルマシリーズの、邦訳第一弾。しかしこれは正確には第五作目にあたります。日本では色々な事情により刊行順に翻訳とは行かなかったらしく、初期の作品の中で日本人でも興味を持ってもらえそうなものを選んだとのこと。
でもこのあと3作目や4作目や1作目を翻訳したんだから、刊行順に翻訳もしてほしかった気もしなかったりします。

この話は海外のミステリに分類されますが、探偵役は修道女のフィデルマ。彼女は修道女であると同時にマンスターの王様の妹でもあり、法廷弁護士(ドーリィ)でもあり、その中でもかなり高位なアンルーです。
舞台となる7世紀のアイルランドでは、フィデルマのように女性が弁護士として法廷に立つのは珍しいことではなかったそうです。
ワトソン役はサクソン人のエイダルフ修道士。フィデルマの善き友人で、理解者です。

彼女たちが、マンスターの王である兄の要請で、とある部族の問題を解決しに行くところで、その部族で起こった殺人事件の解決に乗り出します。
最初犯人は身体に障害を持つモーエンという青年だと目されていたが、どうも違うようで……?

上下巻なので、上巻だけではまだ事件の全貌は謎に包まれています。
でも、舞台となる7世紀のアイルランドの描写が本当に素晴らしいです。
作者様はケルト学者であるらしく、その確かな知識で構築される緻密な世界観は、読んでいて興味深く、新しい発見が出来ます。アイルランドの宗教観では、キリスト教でも男女平等だとか、障害者を保護するしっかりとした法律が存在していたとか……。

主人公のフィデルマは、設定からしてスーパー・ウーマンのような感じがしますが、でも、実際に居ないことはない女性でした。
ただ、やはりちょっと物言いがきついというか、冷たいというか、誇り高いところもあり、特に同じく気位の高い女性と話すシーンなどははらはらと心配させられます。
でも友人のエイダルフと話すときなど、とても魅力的な女性です。
そのエイダルフはなかなかの好青年で、加えて美青年らしい。よくフィデルマをアシストしています。

まだ上巻なので、ミステリとしてどのくらいの出来なのかはわかりませんが、世界観の書き方なら一級品。
あまりなじみのない時代ですが、物語中の描写や巻末の注釈などが充実しているので、戸惑うことなく読めました(むしろ注釈が楽しい)
まるで昔のアイルランドで本当に暮らしているかのような、そんな気分が味わえます。

アイルランドの歴史などに興味のある方には特におすすめ出来る一冊です。
後編も楽しみです。

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